スタグフレーション2.0

季節は「初冬」になっても、ヨーロッパはあんがいと例年よりも温かいから、エネルギー特に「ガス」危機は、落ち着いてきたように「報道」されている。
どの家庭でも、高騰した水道光熱費を抑えるために、とにかく「節約」をしていることもあってできた「需要減」が、価格安定に一服感を与えているのだ。

しかし、先日、このことに水をさす「予報」を、英国気象庁が出した。
今年の冬は、例年より寒くなる、と。

とにかく「温暖化阻止」をやってきた、ドイツは、プーチン氏が言った「寒い国は温暖化したほうがいい」が、身に浸みてきたろうが、ドイツ人の「頑固」さは、かんたんに覆らないのか、それともバカなのか?

おそらく、繁栄の「奢り」なのだろう。

どちらにせよ、基本経済指標たる「CPI(消費者物価指数)」の上昇は止まらない。
10月速報値をみると、ユーロ圏全体では、対前年同月比で+10.7%と、とうとう二ケタに突入した。

念のため、9月は、+9.9%だった。

物価が大きく変動する特徴があるために、生鮮食料品とエネルギーを除く「コア指数」でみると、+5.0%(9月は+4.8%)であった。

すると、物価全体に影響している食料品などだけでみると、+13.1%という数字になって、エネルギー価格は+41.9%という驚きの状態にある。

「インフレ」の「深度」がわかるのは、サービス価格(=人件費)の上昇具合だ。
通常レベルの物価上昇では、すぐさま賃金の上昇にまで「及ばない」けど、深刻化したインフレ経済下では、人件費も上昇するからである。

それで、+4.4%も上昇していることがわかった。
つまりこれで、ヨーロッパのインフレは、「一過性ではない」ことが確認できるのである。

一方で、日本人からしたら、「名目的」にも賃金が上がらないばかりか、「円安」による国際比較での「目減り」を考慮すると、複雑な心境にならざるをえない。

当然だが、物価の上昇率と賃金上昇率の「差」は、個人の貧困化という事態を招くし、企業は「消費の縮小」に見舞われる。
しかし、値上げしなと「コスト増」を吸収できないことになるので、「不況」になるから、これを、「スタグフレーション」というのである。

Stagnation(景気停滞)と、Inflationを併せた「造語」である。

70年代から80年代に欧米で猛威を振るった、「怪物」の「2.0版」が50年ぶりにやってきたのだ。
しかし、今回の「スタグフレーション2.0」は、わざと政治的・人為的に起こされた、いわば「人工地震」のようなものが「原因」なのだ。

ところが、この「人工」をやった連中は、あたかも「自然現象」のように振る舞って、50年前に成功した対策、「金融引き締め」を金科玉条としていることに注目しないといけない。

真の原因は、アメリカを「震源」とする、石油価格高騰「策」をはじめとした人為で、表面のプロパガンダでは「脱炭素」による、化石燃料消費への強制的な抑制と、これに応じないロシアの安い石油を世界から遮断するために起こした、「ウクライナ」である。

これら一連の「政策」は、世界の一般人の生活を窮乏化させるけど、世界の一部の利権をもつひとたちには、莫大な利益をもたらす。
もちろん、「民主主義」が正常に機能したら「不可能」だけど、その民主主義を破壊する工作も同時にやって、不可能を可能へと転換させた。

今回のアメリカ中間選挙2022もしかりだが、もっと壮大な時間をかけた準備が「EU」なのである。
戦後の「ECC」から、徐々に「EC」へ、そしてとうとう「EU」を作り上げて、一般人の選挙権を完全に奪った。

何度も書くが、「EU」を支配している、「EU委員会(その長は、EU委員長:President of the European Commission)」は、官僚集団であって、まったく選挙とは無縁な「構造」になっている。

それで、「ダミー」としての、「EU大統領(正規には、議決権のない欧州理事会議長:President of the European Council)」とか、「EU議会(European Parliament)」をつくって、誤魔化しているのである。

ちなみに、欧州理事会は戦前のわが国の「貴族院」に似ていて、欧州議会が「衆議院」にあたるのは、国民選挙の有無のちがいで、欧州議員は各国での直接選挙で選出されるのだが、これらの「上」に君臨しているのが、EU委員会であり、EU委員長なのだ。

ただし、ようやく欧州議会が、少しだけEU委員会に意見をいえるようにはなってきたのは、さすがにヨーロッパの一般人も「気がついた」からである。

これには、旧社会主義国の人々の西側自由圏への「憧れ」が、EU機構の「がっかり」になって反発してくれたおかげでもある。
彼らには、EUが正しく「旧ソ連」に見えたからだった。

ならばそんな「機構」に加盟するのはなぜかといえば、「統一通貨ユーロ」の魅力を構成する「補助金」欲しさなのである。
これを支えているのが、ヨーロッパ中央銀行(ECB)なのである。

わが国も完全に「官僚支配」が出来上がったのは、GHQ支配もさることながら、元来の「明治政府」が、そもそもの「官僚支配=薩長閥」だったから、このところの「法務大臣」による、発言の正直さに、かえって感心するのである。

それが証拠に、自民党内からも「辞任要求」があるという動きになる。
そうやって、官僚支配を正直にいうひとを排除したいひとたちがいる。
もちろん、葉梨氏のなんのための「国会:議会」かということの完全無理解は、選出した有権者の「阿呆さ」を示すものでしかないけれど。

そんなわけで、ヨーロッパに話をもどすと、個別の国でのCPIは、

ドイツは、+11.9%という「記録」を更新中(9月は、+10.9%)だし、ボコボコにされると予想した「反EU」の新政権イタリアも、+12.8%(同、+9.4%)と、一気呵成にドイツからヨーロッパ最悪の汚名を「奪取」した。

ところが、エネルギー自給を果たしているフランスは、+7.1%(同、+6.2%)と、独仏で明暗が分かれている。
だからといって、原子力発電が主体のフランスを真似ろ!と短絡的な意見をいいたいのではない。

いいも悪いも、フランスが原子力発電「大国」でいられるのは、原料の「ウラン」が旧植民地のアフリカ・ニジェールで採れるからである。
つまり、フランスは相変わらず「植民地支配」を続けているのである。

そんなわけで、ヨーロッパは、今冬、まったくの「気候頼み」状態になって、地球は持続するけれど、人間が持続できないかもしれないことになった。

温暖化のおかげで「暖冬」であることを、祈るばかりなのである。

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