投票できない中間選挙

総体的に(連邦上・下両院、州知事選、州司法長官選、州務長官選からなにから)、「民主党不利」が伝えられていた「アメリカ中間選挙2022」だったが、バイデンは2020と同様、事前に「不気味な自信」を発言していた。

それで、誰もが「またか?」と予想したものの、なにが起きるのか?についての「確信」と「方法」がわからなかった。
これは、ずっと不明のままかもしれないけれど、アメリカ人の「怒り」はいつまで我慢できるのかもわからない。

いわゆる「激戦州」とは、民主党と共和党のどちらかに「ゆらゆら」と揺れ動く「州」があたる。
大統領選挙もしかりだが、上院議員選も知事選もこれにあたる。

一般に、日本人は「政治音痴」というのは、「構造の理解」が薄いからであるけれど、世界一の権力者がアメリカ合衆国大統領だとかんがえることも、その「音痴」さの証拠になっている。

アメリカ合衆国は、大統領の独裁を絶対に許さない構造なのだ。

では、大統領以上の権力があるのはどこか?と問えば、連邦上・下両院議会なのである。
日本でいえば、衆・参両院のことをいう。

しかし、戦後の日本を基本設計したGHQは、自国の議会制度をコピーせずに、ほぼ衆議院の「一院制」にした。
参議院の存在を、本国の「上院」のような「権力」にしなかったからである。

これには、おそらく、「軍の組織」を真似ているからで、日本の徹底的武装解除を目的にしたから、当然といえば当然の処置だった。
ならば、参議院はムダになるけど、これが「残った」ラッキーを、日本人が有効化していないのが「怠慢」なのである。

すると、日本国憲法の改正問題の「核心」は、衆議院と参議院の「権力配分」にあることがわかる。

さて、およそ世界の近代的な軍隊は、作戦と軍政を分割する方法でコントロールされている。
これは、「暴力装置」としての「軍」を、一帯運用させない、という意味だ。

それで、戦闘部隊をコントロールする「作戦」を司る、「参謀本部」や「海軍軍令部」と、「人事と予算=軍政」を司る、「陸軍省」や「海軍省」に分けていたものを、「統合」して、アメリカでは「国防総省」にしたし、日本では「防衛庁から防衛省」にした。

つまり、アメリカの衆議院にあたる、連邦下院は、「連邦予算」を司り、参議院にあたる、連邦上院は「連邦人事」を司るようになっている。
それでもって、「作戦」は、大統領(米軍最高司令官)と大統領府が担っているのだ。

わが国の「ねじれ」は、参議院は無力で、「政府人事」は内閣人事局になっているので、「行政権」のなかでの「運用」を許している。
もちろん、「人事院」をたんなる事務機関に貶めたことも問題だ。

しかも、アメリカ議会(下院)には「予算局」があって、ここが「予算編成」をする。
わが国は、行政権のなかの財務省がこれをやっているから、おどろくほど国会が「ノーコン」の、強大にして巨大な行政機構になっている。

要は、ほぼほぼ与党の党首がなる「首相の独裁」が可能な「構造」になっているのが「日本国憲法」なのである。
あたかも、「明治憲法」の危険をいうひとがいまだにいるけれど、少なくとも明治憲法のコンセプトは、「権力の分断」だった。

それで、天皇独裁の理由とするけど、行政府と軍(統帥権)を分けたのは、無力な天皇の独裁が「ありえない」からだったのだ。
この矛盾を、のちに「昭和の軍部」が悪用した。
それが、軍務大臣現役制、という危険な制度だった。

もちろん、統帥権が「ない」内閣総理大臣は、なんと閣内においても「同列扱い」だったから、ぜんぜん「首班」ではなくて、ただの国務大臣のひとりでしかなかった。
自分の内閣の大臣を、罷免もできなかったので、「総辞職」しか手がなかった。

それでもなんとかやってこれたのは、江戸時代の「朱子学」を中心にした、「儒教的道徳感」が「正義」として庶民にも普及していたから、あからさまな「不正」には、暴力的な反発が起きた。

それが、「焼き討ち事件」とか「打ち壊し」になったのである。

秀吉が「刀狩」令を出したのは、自分のような物騒な人間が農民から出ることがないようにと学校で教わるけれど、大正・昭和の日本人は、鋤や鍬をもって武器としたじつは物騒な国民性がある。

銃をもっているアメリカ人が、「不正選挙」に対抗するという意味で銃をつかわないのは、「理性」からなのか?

なんだかわからないけど、激戦州を中心に、いきなり例の「投票機」が壊れたり作動しないとか、あるいは、投票用紙が足りないとか、日本だったらえらいことになる「事件」が各地で頻発したのは、偶然なのかなんなのか?

それで、わが国のJRが事故で止まったときに車内放送するごとく、他の地区の投票所への移動を奨励されて投票したら、別地区からの投票は「無効」ということになって、またまたえらいことになっている。

当日投票するひとの大半は、共和党支持者と相場が決まっているから、トランプ氏は即座に「とにかく自地区指定の投票所の列に、我慢して並んでいてくれ」と連呼の投稿をしたのだった。

これはこれで、2020年の大統領選挙で垣間見た、「勝てば官軍」ということの価値観がむき出しになっていることの再現でしかない。

日本人は「穢れ」の意識が、宗教的神秘のレベルまで敏感だから、こんな「穢れた選挙」には耐えられない。
そこがまた、日米のちがいなのだと確認できた。

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