今度の不祥事で「詰む」か?

2018年5月6日、アメリカンフットボールの試合における、危険なタックルを「選手の独断」ということにしようとしたおとなたちがいて、なんだか歯切れの悪い思いをさせられた。

なお、一連の騒動における「捜査」で、「逮捕」あるいは「起訴」された者はいなかった。
タックルをした選手には、「起訴猶予」による不起訴処分。
監督とコーチは、「嫌疑不十分」による不起訴処分だった。

ただし、日大における「処分」はされた。
監督の内田氏とヘッドコーチは、結局「懲戒解雇」されたし、アメリカンフットボール部のOBでコーチでもあった日大常務理事の井ノ口忠男氏も辞任している。

さらに、大塚吉兵衛学長をはじめとして、運動部部長職(副部長、監督)にあった常務理事や理事8名が「解任」された。
これには、 田中英壽理事長が兼任している相撲部部長・総監督職の解任も含まれる。

まさに、大学といっても「経営組織」における、幹部たちに激震が走ったのだった。

しかしながら、結局一度も会見を開かなかった、トップの田中英壽理事長は、理事長のままなのだ。
ところが、変なのは、井ノ口忠男氏の「処遇」なのだ。

日大には「子会社」として、「株式会社日本大学事業部」という名の「会社」がある。
あたかも、日大本部の「内部部署」のようだけど別働隊なのだ。
ここに、事件1年後の2019年、理事として復帰して同年には、同社「役員」になっている。
さらに、2020年には、本社にあたる「日大理事」に復帰したのだ。

こんな状況をみると、「懲戒解雇」や「解任」されたままの人たちが、トカゲのしっぽ切りに見えるのはわたしだけではあるまい。
ちなみに、監督で日本大学常務理事だった内田正人氏は、不起訴をもって日大が下した「懲戒解雇」を不当とした裁判での和解で、「退職」となっている。

日大常務理事の内田氏については、大学の「人事担当」であったため、約3600人の非常勤講師の多くを雇い止める方針についても、「労働問題」となった。

それにつけても、「株式会社日本大学事業部」という会社は妙で、事件後まずは、日大常務理事を「辞任」した内田氏ではあったけど、この会社の役員も、日大人事部長も、保健体育審議会事務局長も辞めることはなかった。

果たして、井ノ口忠男氏の「復帰」にしても、内田正人氏の当初の「処遇」にしても、組織人ならわかるとおり、本人が自分で決められるものではない。
「人事権」を誰かが発動して、これらの人物の立場をコントロールしているはずだ。

良くも悪くも、それが「トップ」だけの「特権」なのは、誰でも知っている組織運営の「常識」というものだ。
一般企業なら、「社長」の持つ最大の権力が「人事」なのである。

こんな事情を踏まえて、前出の「現職日大理事」である井ノ口忠男氏が、日大板橋病院の建て替えで設計会社の選定をめぐる、「背任容疑」で逮捕された。
逮捕したのは、警視庁ではなく東京地検特捜部だ。
また、同特捜部は、田中理事長の自宅にも家宅捜査をした。

これについて、田中英壽理事長は、「自分は悪いことはしていない」とコメントしたことが報道されている。
残念なのは、「組織長として」のコメントをとったのかとらなかったのかが、ハッキリしないことである。

まことに、わが国の報道は「浅い」のである。

少なくとも、理事長として逮捕された部下をみれば、「人事権」と「組織運営上」の責任は免れない。
個人的な収賄とか詐欺ではなくて、日大病院への投資案件についての「背任容疑」なのだ。

もしかしたら、「特別背任罪」へ「格上げ」となるかもしれない。
「背任罪」と「特別背任罪」の違いは、「大きな権限が与えられたひと」によるかどうかであって、刑罰も違う。

だから、すでに「理事」の井ノ口忠男容疑者だって、「大きな権限がある」となれば適用される可能性だってあるけれど、もしや理事長ともなれば「確実」だ。
そんなわけで、今後の捜査の進展がどうなるのか?興味が尽きない。

さてそれで、わが国には、他人の「箸の上げ下ろし」まで「(行政)指導」と表した命令をする、文部科学省に巣くう文部官僚という生き物がいる。

おそらく、日大という当事者よりも、省の組織をあげて、上を下への大騒ぎになっているはずだ。
現職理事の逮捕だけでも、大事件だ。
それでもって、「今後の捜査の進展を見守る」とかなんとか言いながら、日大の総務課長あたりを呼びつけて「事情聴取」をしているだろう。

これに、「病院建設」ということでの、厚生労働省も同様にアタフタとしているだろう。
新内閣における、選挙前の「アリバイ」イベントができた。
なんか仕事をしている「風情」というやつだ。

アメフト事件は、傷害事件とその教唆だったから、本当は金銭欲の本件よりもはるかに「重い」ものだった。
これを逃れた「奢り」が、「詰む」ことになったのである。

人間の性としても、やっぱり後味が悪いのである。

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