否・観光立国

観光で食えるか?といえば「否」である.もちろん,観光で食うひとはいる.しかし,国民経済が「観光収入」だけに頼ったら,おおくのひとがあぶれてしまうだろう.断言できる.観光が日本の基幹産業になることは,あり得ない.

生産性が低すぎる

最大かつ唯一の理由である.わが国の労働人口構成は,およそ以下のようになっている.

第一次産業:5%

第二次産業:25%

第三次産業:70%(うち,金融およびIT関連は10%)

この国の基幹産業である鉱工業は,世界トップクラスの生産性だが,労働人口比では1/4しかいないのだ.逆にいえば,わが国は1/4の労働者で支えられている.

生産性がとくに低いのは,「人的サービス業」である.飲食業,宿泊業が典型的である.しかし,これら産業の生産性の低さは世界共通なのだ.その中にあって,わが国のこれら産業はとくに低い.

昨年2016年の出生者数は100万人を切った

これは,19年後の新成人の数でもある.彼ら彼女らは,いったいどういう職業につくのだろうか?2015年の国勢調査では,わが国の労働力人口は6,075万人である.彼ら彼女らの時代は,今後の出生数を約100万人弱でキープしたとして,60年間をもって労働力としても,2015年の数には足らない.つまり,職業を今以上に選べるのだ.

賃金の上昇に適応できる産業しか残らない

つまり,生産性の高い業種に就職希望者が殺到することになる.それは企業への就職という形態だけでなく,貴重となる職人のうち,高く売れる分野も有望になる.つまり,熟練を要さない分野や知識集約的でない分野は,人材不足によって淘汰される可能性がでてくる.

親子で気づいているか?

まず,このような激変に学校が気づいていない.とくに公立学校は鈍感だろう.なにしろ,文部科学省という超鈍感な役所の命令を待つしかないから,世間とは別世界が続くはずだ.生徒の自殺問題やいじめ問題にまったく他人事の対応しかできない,地元の教育委員会という役所もおよそ無関心にちがいない.では,親が気づいているか?ここに将来の「格差の芽」がある.全入どころか,国立でも倒産する大学が続出すると予想されるから,ただの「大卒」では,せっかくのチャンスをのがすだろう.つまり,知識集約的な専門レベルなのか,一方で勉強が嫌い,あるいは不得意なら従来以上に職人になる魅力が増加する.すなわち二極化するようで実は「専門化」するから選択肢の幅が広くなる.そして,非熟練・非専門の職業は先の世代でなくなる可能性がある.こうしたことに,はやく気づけば,有利になるのは当然だ.すさまじいスピードで,日本社会は変化せざるをえないから,親子の戦略的会話が子どもの将来を決めるインセンティブになる.

事業継承ビジネスよりも事業売却ビジネスになる

相当数が淘汰されてからの「安定」は期待できない.2020年の東京オリンピックが終わってわずか5年後の2025年には,東京都の人口も減少に転じる予想だ.地方からの若者の転入で,人口を維持してきた巨大都市も,供給元の地方に若者がいなくなる.さらに5年後の2030年には,とうとう東京郊外でゴーストタウンが生まれる.いまから,たった13年後だ.最近,メガバンクが大縮小計画を発表した.理由を確認すれば,本音がわかる.日銀のマイナス金利で,銀行本業の収益性が落ちた.これに少子化で,将来の行員確保が困難だから,という.つまり,銀行では,知識集約的な専門レベルの人材でないと,不要,と宣言したのだ.なぜなら,これから,中小零細企業の廃業が激増するはずだ.これをまたぞろ政府はムリクリに事業継承をさせようとし,税まで優遇しようというお節介な介入をしたがっている.懲りない連中である.それよりも,「使える」技術や会社を売却した方がよい.ここに銀行はビジネスの目をつけたはずだ.このような転換は,全部の業種で発生する.

生産性の低い観光業のみなさんには,悲惨な結末になる前に,計画的な事業売却か廃業をおすすめする.若い従業員は,自分の職業能力高度化に投資しないと,中年以降に見捨てられる可能性がある.

社会人の再教育が沸騰する

だから,すでに社会人になってしまったひとの専門化が,社会の最重要課題になるはずだ.大学は,社会人の受け入れについて,最大の経営努力をしなければならないことに必然的に気がつくはずだ.高卒者だけを新入生としたら,成り立たないのが目に見えている.一方,企業も,どのような人材を求めているかを明確にしないと,求職者の募集ができなくなるだろう.

こうして,社会全体の生産性が高まり,高コスト負担に耐えられるようになってから,日本の観光業も息ができるようになる.高単価な収益のためには,高度な人材が必要であるからだ.つまり,低単価で大量に売ろうというビジネスモデルの終焉なのだ.

 

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