時間泥棒・JRの不親切な放送

快速電車が、後続の各駅停車の「遅れ」を調整するために、「各駅に臨時停車する」という社内放送が繰り返しあるなか、停車した快速電車も停車する駅のホームでは、特段の案内放送がないから快速電車のままで出発した、という話である。

細かすぎてどうでもいい話である。
とおもったひとは、以下をお読みなる必要はない。
もちろん、鉄道先進国であったはずの欧米では、もっとひどい案内状態なので、「論外」というご判断もあろう。

しかし、「日本の鉄道は世界一」と、自画自賛しているのが、わが国の「業界」なのだから、見過ごせない、ということになる。
ここでいう、「鉄道」には、乗り心地とかだけでなく、安全性とか時間の信頼性とかという、「サービス品質」も含まれているからである。

つまり、「たかが放送」ということにはならないのが、「自負」というものだし、その「品質」に、放送も含まれているのである。

快速が停まる駅の放送で、次駅以降の臨時停車を告げない、ということは、各駅停車に乗らないといけないひとたちの、時間を奪う、という行為である。

実際に、ドアを開けたまま車内放送で臨時停車の案内をしても、聞こえなければ意味がないし、次の各駅停車に乗ると決めて待っているひとには、聞こえたところで「?」がついて、確認の放送を聞きたくなるのが人情だけど、電車はあっさりと発車ベルを鳴らして出発したのである。

駅の電光掲示板も、「快速」の文字がそのままで、電車自体も「快速」表示のままなのである。

だから、次の各駅停車しか停まらない駅では、この電車の到着案内は、そもそも電光掲示板にない。
それで、いるはずのない電車が停車して、降車したひとたちがホームにあふれてくるから、呆然と出発するのを観て驚く客がいるのは、完全に「乗り遅れた」からである。

つまり、ここでも「時間泥棒」を働いたことになる。

駅員による案内放送があれば、それにこしたことはない。
しかし、不思議なのは、「電光掲示板」なのだ。
「臨時停車」を伝える方法が、あらかじめ用意(プログラム)されていないことに尽きる。

むかし、BBCが東海道新幹線の「特集番組」を作って放送したことがある。
ちょうど、いま主力になっている「N700系」がデビューする前の時期である。

インタビューに技術担当者が、あらゆる技術を駆使して、「700系」からの「時間短縮」は、「5分です」と答えた。
これに、BBCのレポーターはたまげたのである。
「たったの5分?」

しかし、この技術担当者は怯むことなく、真顔で「乗客の数掛ける5分の短縮だから、ものすごい効果がある」と。
そこで、日本人のこの発想が経済発展をさせ、「たった5分?」とかんがえるイギリス人の発想が、英国を衰退させたのだ、と結んだ。

だから、たとえ在来線であっても、「乗客の時間短縮」について、世界水準からしたら「異常」なほど敏感であってこその日本の鉄道といえる。
けれども現実のJRには、新幹線と在来線とで、明確な発想の違いが存在することになる。

「横浜駅」で考えると、ワンマン運転の鉄道は、横浜市営地下鉄だけだ。
ユニークなのは、新幹線とおなじ「標準軌」の線路幅で、ストップ&ゴーのダッシュを繰り返す、「関東最速」を誇る京浜急行がある。

JRの川崎駅より多摩川に近い東京寄りに京急川崎駅があるから、その分の距離が不利ではあるけど、東海道線と京急特快(どちらも次の停車駅は横浜)で、「2分」の差で京急の勝ちだった。

刑事ドラマではないし、危険だから真似っこはしたくないものの、横浜駅で「うまくしたら」東海道線に乗り換えができるかもしれない。
これで、「アリバイが崩れる」なんて作品があってもよさそうなものだ。

その京浜急行は、駅の放送を「車掌」が兼務している。
共通の「ワイヤレスマイク」で、ちゃんと駅での放送をやっている。
だから、今回のような「臨時」の場合も、車掌さんが解決を図ることにするだろう。

これが、「民間」なのである。

なおついでに書けば、京急の全線にわたる「ポイント切替操作」は、ぜんぶ「人間」がスイッチイングしている。
コンピュータに仕込んだプログラムに「依存しない」仕組みなのである。
中央コントルームで、4000回/日以上のスイッチングを、表示パネルで確認しながら人がやる。

表示パネルはコンピュータが表示させるから、「ハイブリッド式」ともいえる。
その理由は、突然の出来事に瞬時に対応させるため、なのだ。

さて、今回の「臨時停車」は、後続の各駅停車の遅れが原因であった。
これは、「待ち行列理論」の応用である。
でもやっぱり、民営になりきれないJRの残念がある。

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