最強の権力は通貨発行権

だれが通貨を発行しているのか?をみれば、そのエリアの最高権力者が誰だかわかるようになっている。

しかし、それぞれの国民のおおくがこのことに気づくと面倒なので、学校教育でも教えない、という方針がどちらの国でも貫かれていて、最高権力者とは、大統領とか首相とか、あるいは国王といったひとたちなのだ、と嘘を教えこむのである。

学校で成績がよかった友人のいまをみて、2パターンあることに気づくのは、ほんとうに優秀なタイプと、おそろしいまでの愚鈍のどちらかなのである。

おそろしいまでの愚鈍とは、先生のいうことを完全に信じて、余計なことをかんがえない(疑わない)から、テストの成績だけはよい、というタイプである。
それで、役人になってそこそこの地位は得るが、世情にまったく疎いので、話が合わなくなるのである。

さてそれで、通貨発行権のはなしに戻すと、ヨーロッパ大陸と英国で発展したのは、前にも書いた、金細工師たちが顧客たる王侯貴族から預かった持ち込み材料としての「金(Gold)」について、「預かり証」を発行したことが、「紙幣誕生」となったのである。

この「預かり証」を発行すれば、金細工師の業者間での「融通」ができることに気がついて、ほんとうに預かった金の量の10倍程度までなら、だれにも迷惑がかからないばかりか、「大儲け」できること経験値からわかったのである。

なぜなら、10倍の発行額だけでも儲かるのに、預かり証の貸し借りで「手数料たる金利がつく」ことも発見したからである。

これが、彼の地での銀行(金を融通しあうから「金融」)業のはじまりである。

対して、別文明のわが国では、「政府発行の貨幣」が江戸時代までの伝統だった。
「和同開珎」であろうが、輸入した「銅貨」であろうが、管理したのはときの政府だったのだ。
江戸幕府は、「金座」と「銀座」で、貨幣の鋳造をしていたし、小判の金の含有率も、幕閣が決めていた。

それでもって、「両替」をしないと、いざ使うときに都合が悪くなったり、米が武士の給料だったりしたので、これらの現金化をしないと生活できない。
「札差」とか、「両替商」がそれぞれ誕生して、重量がある金貨を持ち歩く面倒を、紙に書いた「為替」でもって決済できるようにしたのである。

だから、わが国の「金融」と、ヨーロッパの「金融」は、まるでちがっていた。

それに、ヨーロッパの金融業は、王侯貴族の保有する金(Gold)資産を預かることからはじまるから、これをもって、「通貨発行」をはじめて、中央銀行をじぶんたちでつくったのである。
これを、通貨発行権をめぐる対立としてみると、清教徒革命(イングランド内戦)の別の側面がみえてくる。

国王チャールズ1世を処刑した、オリバー・クロムウェルは、イングランド銀行を王家に設立させるが、王家の持ち分は2割だけとした。
この2割すら奪ったのが、初代ロスチャイルドだった。

こうして、英国は、民間人が所有する中央銀行となった。

アメリカはもっと複雑で、1913年にFRBができるまで、中央銀行はなかった。
悪名高きウィルソン大統領が、クリスマス休暇中の議会に提案して、ワシントンに残っていた少数の民主党議員だけで、FRB創設法案を通してしまったという経緯がある。

で、FRBも完全民間企業で、アメリカ政府は1セントも出資していない。

ならば、日本銀行はどうなのか?
資本金は1億円だとわかっているが、株主がだれかは一切公表されていない。
日本政府が半分持っているというのは、「噂」にすぎないのだ。

中央銀行は、政府から独立している、というのは、通貨発行権のことをいう。

明治維新は、この点で、幕府が持っていた通貨発行権を、日本銀行に引き渡した「維新」だった。
しかし、旧日本銀行法では、政府の管理下に置いたので、「政府=日銀」という言い方はできた。
これが、英国留学で「長州5」が学んだイングランド銀行の欠点を補う成果であったが、日銀のボロ儲けも容認したものだった。

「バブルの反省」という言い訳で、政府から独立すると明記した、「新日銀法」ができたのは、平成10年(1998年)4月1日からであった。
株式持ち分を変更せずに、上書きした法律とした意図はなにか?

なんだか、イングランド銀行とか、FRBに近づいたのである。

国民は、日銀総裁職が、日銀プロパー、政府(大蔵・財務)官僚、経済学者の三分野から順繰りで選ばれているのはしっているけど、組織を支えるのはナンバー2以下であることもしっている。
これは、NHKをみてもおなじで、ポンとトップだけを換えても、大勢に影響しない。

28日、日銀は突如、長期金利を従来の0.5%から、1%までを容認すると発表した。
これが、「突如」だったのは、前週に「金利水準を変えることはない」としていたからだ。

つまり、「抜き打ち」だった。
内部で、最低でも2派による論争があったことを示唆する。

とはいえ、アメリカ、英国、EUの高い金利水準からしたら、日本は低い。
この結果、日本で円を借りて外国投資する(ドルに換金する)流れがとまるのか?つまり、円安がとまるのか?が議論されている。

なんだか話が小さいのだ。

そもそも、放漫財政で膨らんだ巨大な政府債務があるので、金利を上げられない。
日本株を下支えするために、上場日本企業株の大株主が日銀だ。
売ろうにも売れないし、円安で外国からの日本株買いも恒常化していることが、円相場の綱引き状態をつくっているのだ。

来月は、BRICsの新通貨構想がどんなものか?が発表されるから、ここに世界が大注目している。
なにせ、新通貨のスポンサー(なにを兌換の根拠とするのか?)は、大資源国ロシアにつきる。

従来の通貨発行権に抵触するはずなので、数百年に1度の大変化となるやもしれぬ。

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