第二次名誉革命はあるのか?

強大な政府を持つ不幸について、前に書いた。
英国の衰退は、なにもブレグジット(EU離脱:2020年1月31日)だけのせいではない。

もともとをいえば、第一次大戦あたりからフラフラになっていたのが、第二次大戦で決定的となって、「パクス・ブリタニカ」が「パクス・アメリカーナ」へと世界の中心が移動したのである。
もっともその「パクス・ブリタニカ」すら、阿片貿易という麻薬を販売して稼ぐ事の「効率」を、国家・組織を挙げてやった結果だったから、産業資本主義が成功したものとはぜんぜんいえないものだったけど。

ちょっとだけ日本の先進的事例をあてはめれば、上杉謙信がうちたてた「上杉120万石」が、関ヶ原後の強制転封で半減し、さらに相続問題で半減して、とうとう15万石に落ちぶれて(それでもでかい)も、120万石の「家格と格式」を死守したから、とうとう上杉鷹山が婿入りしたときの、ほぼ破産状態がいまの英国と重なるのである。

ただし、表向きに存在する英王室の私的財産が莫大なのは、阿片による利益のすさまじさの証拠だし、裏にあるイングランド銀行を所有しているロスチャイルド家の資産の半端なさは、日本人の「お金持ち」のレベルを超えて想像もつかない。
こんな富が一握りのひとたちの個人資産なのだから、日本の上杉家のような覇権を争った「大名家」における困窮と貧乏それに経世済民の思想も、彼らには想像がつかないだろう。

あのJ.F.ケネディが、大統領になったときに、尊敬する政治家は誰かと記者に質問されて、Yozan Uesugi、と答えたことの深い意味を、当時の英語に堪能な若き日本人記者もすでに理解できない教育レベルになっていた。

 

邪悪なフランクリン・ルーズヴェルトと組んで、邪悪な戦争を指導したのがウィンストン・チャーチルだったけど、戦後の日本人は子供の時分から、チャーチルは偉人だと習う悪い風習ができた。
吉田茂は、戦時中の英国駐在大使という閑職にあって、きっとチャーチルのものまねを研究していたにちがいない。

「ゆりかごから墓場まで」を堂々と標榜した英国の社会主義は、戦後、加速度的に進行して、保守党の日和るひとたち(とにかく議席にしがみつく)が、労働党と左傾化競争をしたのである。
これを後押ししたのが、ロンドン大学の構成校、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE)だった。

この社会主義者養成校が、なにをとち狂ったのか、あるいは偽装のためか?あろうことか真性自由主義者のハイエクを招聘して、18年も教授職をやらせていた。
おそらく、ハイエクのなかの積年の鬱憤が、歴史的名著と名高いものの、計量経済学者としての自殺になった、『隷属(従)への道』を書かせたのだろう。

以降、ケインズとの激しい論争を経て、ハイエクは法哲学の深淵に向かい、「新自由主義」の旗手となったが、その「新自由主義」がグローバル全体主義に横取りされて、ぜんぜんちがう「主義」としての攻撃対象になってしまった。

つまり、ハイエクの思想とは真逆の、「統制経済=全体主義」を目指すものと再定義されていて、これをやりたい連中がすっとぼけて自己欺瞞の論陣を張り、この土俵に乗って反論するから、どんどんとちがう用語になってしまったのである。

巷間、ハイエクはケインズに「負けた」といわれているけど、実態はその逆で、ケインズがハイエクに歩み寄って、ケインズ自ら「ケインズ経済学(=政府部門に依存する社会主義経済学)における政府の財政出動は、不況時に限る」といわしめたのである。

しかしながら、英国大蔵省の官僚だったケインズが、「不況時に限る」ようなことを、いったん味をしめた政府が「限りなく実行する」ことの原理をしらないはずはないから、どこまでの歩み寄りだったかはわからない。

ただ、ケインズがケインズ経済学の限界を示した事も、いまではどの国の政治家もしらないでいられるのは、学者がとぼけて教えないからだろう。
政府からの「援助交際」としての予算がほしいからである。

こんな先生たちを見破った女子高生や女子大生が、「援交」を求めるのは、よほど教育が行き渡っている証拠でもあるから、教育とはおそるべき洗脳を意味する。

 

そんな堕落した保守党に、彗星のごとく登場したのが、主要閣僚の経験がなかったサッチャー女史だった。
彼女の時代のラッキーは、ビッグテックもいない世の中だったから、ハイエクの政策が正々堂々と実行できた。

しかしながら、そのサッチャー女史を「降ろす運動」が、保守党にできて、まるで砂上の楼閣のごとく、あるいは、積木くずしのごとく崩壊させて、元の木阿弥にしたのであった。

それでまた、社会主義推進が強力に進められて、とうとう日本の自民党のように、共産党も飲み込む勢いになって、英国では労働党の影が薄くなった。
保守党が社会党よりも左傾化したからである。

国王と貴族が現存する、階級社会の英国では、庶民はたいがいが庶民のままで一生を終えることになっている。
だから、教育内容は別にして、日本人がかんがえるほど、英国は平等社会ではない。

英国国会の下院のことを、「庶民院」というのは、貴族からの目線でいっている。
当然ながら、上院にあたる「貴族院」は、勅撰であって国民の一般投票である選挙はない。

名誉革命いらい、国王に政治権力はないので、君臨すれども統治せずになったけど、わが国皇室のごとく伝統もないから、権威もない。
英国王室が、あたかも伝統があるかのように演出する事に執心するのはこのためだ。

そんななか、ミレニアル以降、エネルギー政策を(わざと)間違えて、自然エネルギー(特に風力発電)に依存した大失敗(じつは目的通り)で、庶民はろうそうくで暖をとるまでになってしまった。
これに、家賃の高騰が襲って、寒空の下、ホームレスもあふれ出している。
いまや、大英帝国の庶民は、ドッグフードをかじっているのである。

国民奴隷化を意図する政治がつくりだしたこの悲惨は、議会に対する第二次名誉革命になるのか?という期待を生みだしているけれど、そんな元気もなくなっているかもしれない。

なぜならば、国民投票でブレグジットに賛成した理由が、移民が得る「国民健康保険」への反発だったからである。
分け前はわたさない、という損得勘定をやった根性が政府に利用されてしまった。
ひるがえって、わが国では、外国人への生活保護手当が政治問題になっている。

ほんとうの吸血鬼は政府なんだけど。

「法」ではなくて、局長級の「通達」によるこの制度に、外国政府が正式に「日本に行って生活保護申請をせよ」と自国民にアナウンスしていることが、国家安全保障にかかわるという議論にならないで、個人の損得勘定にするのはどうなっているのか?

政府がより強大化して国民の管理に役立つ、「マイナンバーカード」を申請すれば、おカネがもらえるからやる、という団塊世代の高齢者が多数なのも、乞食になることよりも「自分だけ」を教育されたことの成果なのである。

英国人と日本人のどちらが早く、名誉革命を仕掛けるのか?のみえない競争がある。
しかし、デジタル・シフトして個人情報を握った政府は、歴史上最強の存在になるので、残念ながら「隷属(従)への道」を突き進んでいて、もはや完成間近に迫っている。

そのうち、人生になんか意味がないという「虚無主義」が、政府によって流行るようになるのだろう。
これを誰が言い出すのか?が、裏切り者のあぶり出しにもなるのである。

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