12日、ハンガリー総選挙でオルバン政権が大敗し、EU委員会は狂喜乱舞したようであったが、その翌週19日にあったブルガリアの選挙で「親露派政権」が誕生する事態となった。
ただし、ハンガリーの新政権も、開けてみたらオルバン政権よりもEUには手ごわいかもしれないのである。
ときに、旧ソ連圏の東ヨーロッパとくに、「バルカン半島」は、むかしから「火薬庫」といわれたほどに、小国同士の仲が悪い。
このグズグズに介入した英国諜報機関のサスペンスとして、ヒッチコックが英国時代の傑作『バルカン超特級』(1938年)で描いている。
そのバルカン半島には、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、コソボ、北マケドニア、アルバニア、ギリシャ、ブルガリア、ルーマニアがある。
かつては、「ユーゴスラビア」として、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニア、コソボが統一されていたが、それはまた、チトーによる強権をもっての統一だった。
この入れ子状態構造の上位には、スターリンの強権による「東欧衛星国圏」が構成されたが、なかでも、ルーマニアとブルガリアの仲の悪さは現代にもつながっている。
この両国の国境は、ドナウ川であるけれど、なんと両国を結ぶ「橋梁」は、たったの2箇所しかない。
しかも、両国の言語はぜんぜん別で、ルーマニア(Romania:ローマの辺境)が「ローマ字」を用いるのに対して、ブルガリアでは「キリル文字」が使われている。
ちなみに、ロシア語もキリル文字だが、この字を発明したのがブルガリア人なので、ソ連下にあってブルガリア人はロシアに対しての文化的優越性を誇っていたのである。
それで、昨年のルーマニア大統領選挙でのEUのあからさまな介入で、EU批判をした第一位の得票をした候補者を立候補不適格としたことで、ルーマニアはEU委員会の手に落ちている。
ために、今回、ブルガリア人は対ルーマニアへの感情も含めて、「反EU政権」を圧倒的多数で選択し、1997年から数えてはじめての単独政党政権が誕生する。
EUの外相は、カヤ・カラス(元エストニア首相・現EU副委員長)であるが、この人物の単純さ(知能の低さ)が似たもの同士である強権的なフォン・デア・ライエンEU委員長とともに嫌われている。
つまり、ハンガリーしかり、ブルガリアしかりのEU域内外交の「失敗」に、どのような落とし前をつけるのか?がむかしだったら大騒ぎになるだろうに、いまの全体主義ではこうした批判すら抹殺されるのである。
さて、これで「ドナウ川」が一段と注目されることとなる。
黒海から河口をさかのぼれば、ウクライナ、モルドバ、ルーマニア、ブルガリア、セルビア、クロアチア、ハンガリー、スロバキア、オーストリア、そしてドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)にいたる、2000トン級のはしけによる「国際水上輸送」の要なのである。
そして、モルドバには親露派の支配する「「沿ドニエストル共和国」があって、スロバキア、セルビアも親露派、クロアチアは親露の大統領と親EU首相(政府)とでねじれている。
オーストリアも、親露と親EUで割れているのである。
すると、総じて、ドナウ川周辺は「親露」が優勢にあるとわかる。
なんにせよ、黒海という内海は、さらに地中海という内海で大洋にでる。
すると、ボスポラス海峡、ダーダネルス海峡、ジブラルタル海峡が要となるので、ホルムズ海峡の自由通行が妨げられるのは、ドナウ川通行の死活問題であることにかわりない。
わが国にすれば、「シーレーン」にあたるからである。

