こないだ、スロバキア総選挙が秋にあってどうなるか?と書いたが、北の隣国ポーランドも10月15日に総選挙がある。
スロバキアの総選挙は、前倒しになって、30日とあと一週間に迫っている。
30年程前になった、旧ソ連圏だった東欧の体制転換では、どの国も社会主義統制(計画)経済から自由主義経済に移行するのに苦労した。
それは、各国が「ソ連衛星国」といわれたように、東欧諸国は無理やりにソ連依存させられる枠組みの、巨大な計画経済圏に組み込まれたからで、自主的な経済運営ができなかった状態が40年以上も続いたからである。
ソ連共産党の幹部だった、エリツィン氏がクーデターで失脚したゴルバチョフ氏に代わって大統領になったけど、このひとは、「自由化さえすれば」計画経済が自由主義経済に簡単に転換すると単純思考して、英・米の餌食になったのである。
もちろん、アメリカ政府も千載一遇のチャンスとばかり、ノーベル経済学賞学者もいれたデレゲーションを組んで、ロシア経済顧問団としてエリツィン政権への助言者となったが、これも「自由化さえすれば」計画経済から脱却できると諸制度を破壊する活動をして、特にロシアの資源を餌食にする片棒をかついだのである。
「本国」ロシアのこの体たらくで、困り果てたのが東欧諸国だったけど、戦後初めて自主的な経済運営のチャンスを逃さなかったのである。
なぜなら、東欧諸国は、「戦前」には、自由主義経済を経験していたからで、農奴の田舎国だったロシアとは決定的にちがったのである。
その成功者が、ポーランドだった。
スロバキアの話でも書いたように、ポーランドもその大きな国土の利用可能な土地のほとんどが、農地なのである。
けれども、「GDP」という指標でみたら、農業は数%にしかならないので、たいしたことはないようにみえる。
ところが、「ポーラ(真っ平らな)・ランド(土地)」という国名の由来通り、それと、プロイセン時代の皇帝からの命令で、とにかく「ジャガイモ畑」が地平線に続く国なのである。
つまり、食料自給率が100%を超えているから、この分、農産物輸出国でもある。
コロナ前だが、ポーランドを旅した経験からしたら、ジャガイモは1㎏40円ほどだった。
それに、ロシア人もそうだが、ポーランド人も半数を超えるひとたちが、ふつうに「ダーチャ:別荘」を郊外にもっていて、そこで家庭菜園(といっても広い)をやるのもふつうなのである。
土地がありあまる国情も、わが国とはぜんぜんちがう。
ワルシャワからクルマで1時間半ほどの別荘分譲地は、日本風に120坪の面積で、だいたい50万円という相場で、なんとクレジットカード決済も可能だった。
だから、ダーチャをもたないひとが、都会のスーパーとかで野菜を買うというほどのもので、消費一方のわが国とは比較にならない常識がある。
さてそんな中、またもや「ウクライナ」が話題の中心になっている。
ただし、話のきっかけはウクライナではなくて、全体主義EU委員会の強制的な行政命令である。
それは、ウクライナ産農産物のEU域内輸出にあたって、EUが「ウクライナ支援の一環」として、「非課税」としたからである。
ここで、「EU」という機構のややこしさ、あるいは、欺瞞について、このブログでは何度も書いてきたけれど、最高意思決定権は、「EU委員会の委員長」にあるという、おそろしくも、世界最大の行政機構が国家群を支配する構造になっていることなのである。
これを、「国連」も真似て、パンデミックに関する「規約」と「条約」をWHO名で改定し、まずはWHOから全体主義の世界政府にするという魂胆になっている。
来年、5月に、この決定のための総会が開催される予定で、わが国の自・公政権側は、たとえ年末あたりに総選挙があっても、ぜったいに「争点にはしない」で、しれっと賛成票を投じるにちがいない。
それで、EUには一応「議会」があるけれど、EU委員長の権限に対抗するように、はなから設計されていない。
つまり、最初から、選挙で選ばれないEU官僚というひとたちの好きにできるのがEUなのである。
ただし、これが日本一国で「極」でつくっていた官僚国家の強みであると判断したのが、原因だから、いまの全体主義EUの原本はわが国なのである。
そんなわけで、黒海の港町オデッサからの輸出が、ウクライナの収入源で、輸出先はエジプトとかの慢性的食料不足にして貧困国だったのである。
ところが、何かを待つように(イランの核開発を阻止すべくイスラエルの行動)ジワジワとしか動かないロシア軍のために、黒海が事実上封鎖されて、海上輸送ができなくなった。
それで、陸路をもってウクライナ産農産物をヨーロッパ大陸からエジプトとかに輸出しようではないか、となったのである。
ここが、現場をしらないEU官僚が頭の中でかんがえた浅はかの限界であった。
あなたの自国領を通過するだけだから、「非課税」にしてあげようよ、が、ただでさえ「安価なウクライナ産農産物」(だからエジプトとかが買える)なのに、「強烈なディスカウント」になったために、通過国の流通事業者たちが、一斉に「買い付けを」はじめてしまったのである。
これで、EU官僚の目論見はあっさりと破綻して、事実上の「横流し」が発生したが、あろうことか、販売者のウクライナが、エジプトやらまでの陸上輸送コストが節約できて「高く売れる」となったために、「どうぞどうぞ」になって正規輸出に変換されたのだった。
これが、通過国の農家に大打撃となって、その最たるものが、選挙目前のスロバキアとポーランドなのである。
両国とも、「反EU]が国民の総意(農業は有権者が多数)にもなって、大ブーメランになりそうなのである。
それでとうとう、ウクライナへの武器支援から経済援助も「止める」という政権判断になってしまった。
EU脱退の大波が、山津波のようになるのかどうか?期待をもって注目したい。