ヒヤリとハット

事故がなく安全な状態を維持するのは,あんがい難しい.
ちゃんとしようとすると,ちゃんとコストがかかるようになっている.そこで,ほどほど,におちつくのだが,その「ほどほど」でほんとうに大丈夫なのか?となると,わからない.

個人ではなく,企業の安全対策は,基本中の基本なのだが,わかっちゃいるけど状態になりがちである.それは,やはりコストの問題があるからだ.

一口に「事故」といってもいろいろある.
そこで,最悪をかんがえることが一番いい.もちろん,最悪な事故は,人身事故で,それも死亡事故になる.
これは二つに分類できて,お客様が被害者になるもの,従業員が被害者になるもの,である.

ひとの命に重みのちがいはないが,お客様と従業員とでは,対応がちがってくるのは否めない.

ここでは,まず従業員の例をかんがえてみたい.

「業務上」という日常

会社の敷地であろうがなかろうが,業務上なら勤務中の事故である.
たいていの勤め人は,一日八時間は拘束されているし,通勤途上という時間もある.休みの日はのぞいても,人生の中における総時間数をかんがえると,たいへんな時間を「仕事」につかっている.
なかには,自分の時間のつかいかたがわからなくて,休日なのに会社にくるひともいるから,十人十色ではある.ただし,休みに出てくるこのひとが,仕事をしているかどうかは定かではない.

いわゆる現業部門という「現場」では,さまざまな工具をつかわないと仕事にならない.
だから,こうした工具が原因の事故はむかしからある.
ところが,いまは,病院で患者が取り違えられたり,ちがう薬をつかわれたりという事故まである.
これらはいちように「ヒューマンエラー」が原因といわれている.

そこで,専門家たちがヒューマンエラーの研究をしている.
この研究でわかったことは,「ヒューマンエラー」はなくならない,であった.
その理由は,「ヒューマンエラー」の原因が「ヒューマンエラー」だから,というものだ.
つまり,人間は間違える,ということにつきる.

だから,「ヒューマンエラー」を減らすには,人間は間違える,ことを前提にする必要がある.

なぜ間違えたのか?

たいていの「ヒューマンエラー」は,「つい」「うっかり」である.
しかし,その「つい」と「うっかり」で,自分の臓器が除去されてはたまらない.

そこで,「つい」と「うっかり」を収集して,「つい」と「うっかり」の原因をさぐってみる.
人間個体の神経の認識ミスなら,五感のうちのどれか?
人間個体の記憶ミスなら,記録の方法はないか?
といったぐあいだ.

結局「なぜ?」をくり返す

これは,「トヨタ生産方式」ではないか.
「つい」「うっかり」も「ヒヤリ」「ハット」も,原因の追及は,「なぜ?」である.

すると,従業員の安全を先にかんがえてみたが,お客のばあいもおなじである.
ただし,お客になるシミュレーションをしないといけない.
これは,テーマを変えるといくらでも応用ができる.
サービス向上になったり,生産性向上になったりする.

こうしたシミュレーションを,短時間単一テーマでおこなうのと,一泊まるまるおこなう方法がある.
一泊まるまるを「試泊」といったりする.
幹部でも,試泊経験が一度もないという宿はおおい.

1978年に世にでた大野耐一著「トヨタ生産方式」,奇しくも今年で40年の超ロングセラーである.
いまでも新刊で手に入る.

この本を「カンバン方式」の「ノウハウ本」だとおもっているひとをたまにみかける.
それで,「たいした本ではないのに」と,名著の理由がわからないらしい.
ただしくいえば,ノウハウ本だとおもって読んだら,なにやら漠然としていた,という感想なのだろう.

この本は,「哲学書」である.
漠然としているのではなく,「思想」が語られているのだ.だから「抽象」である.
「具体」ではないから,いくらでも応用できるのだ.
つまり,業種は問わない.
「ヒューマンエラー」の削減にもつかえるのは,その証明である.

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