ロシアのNATO加盟申請

2000年、ロシアを訪問したクリントン大統領に、NATO(北大西洋条約機構)加盟を打診したことを、21日、産経新聞特派員がモスクワのテレビニュースでのプーチン氏の演説として報告した。

2003年、米露首脳会談で、ブッシュ(息子)米大統領も「非公式かつ極秘裏」に、NATO加盟をプーチン大統領に求め、さらに、「ロシアは2、3年以内にNATOの正規加盟国になるかもしれない」と、10月にロシアを訪問したロバートソンNATO事務総長の発言があると、『フォーサイト2003年12月号』にある。

つまり、ロシア側からの加盟打診があって、その後にアメリカが誘い、NATO事務総長もロシアが正規加盟国になる可能性について言及しているのだ。
少なくとも、全部で3回あった、ということだ。

これは一体どういうことか?

本稿冒頭のプーチン氏のテレビ演説では、「初めて明かす」と発言したとあるから、時系列での「言いだしっぺ」は、ロシア側にあったということになる。
それから、アメリカが誘ったのに、どうして加盟できなかったのか?

『フォーサイト』は、同号で、ロシア政権内の「反対」だと書いている。

すると、プーチン氏は、少なくとも2000年時点で、ぜんぜん「独裁者」ではない。
しかも反対したのは、イワノフ国防相だと同記事で名指ししている。
ちなみに、ロシア史上初の「文官」で国防相になった人物だ。

このひとは、2005年に副首相に昇格し、メドベージェフ大統領・プーチン首相の時代も副首相、大統領府長官を歴任し、いまでも大統領特別代表という重職にある。

すなわち、プーチン氏のブレーンのひとりであることは間違いない。
それで、プーチン氏が、イワノフ氏の意見をきいた、という意味でのNATO加盟断念だとすれば、ロシア側の辻褄があうのである。

一方で、NATO側も、ロシアの加盟を「歓迎」する「節」もある。

この2003年時点で、軍産複合体はブッシュ氏を通じて、ロシアを「取り込む」作戦だったのだろう。
すなわち、ソ連時代からのロシア内軍事産業「潰し」が目的だとかんがえられる。

エネルギーや鉄鋼資源などの鉱業、それに宇宙産業を含む軍事産業ぐらい「しか」主たる産業がないのが、ロシアの実情だ。

ゴルバチョフ氏から、前職の、エリツィン氏が推進した、グローバル化で、米英を中心とした「国際資本」がロシアを「食い物」にしはじめたのを「阻止」するのが、歴史的な役割としてプーチン氏が登場した理由なのだ。

つまり、プーチン氏は、いまや世界で「希少種」にあたる、「ナショナリスト」なのである。
トランプ氏と「馬が合う」のは、「アメリカ・ファースト」をいう、ナショナリスト同士だからだ。

しかしながら、ナショナリストは、グローバリストからみたら「敵」にすぎないので、徹底的に潰す、という行動パターンをとられて、「命を失う」ことになる「法則」が働く。

その例が、イラクのフセイン氏であり、リビアのカダフィー氏だった。

フセイン氏を葬ったのは、ブッシュ(息子)で、カダフィー氏を葬ったのは、オバマ・ヒラリー両氏であった。
表面上は共和党(主流派)と民主党という「対極」に見えるけど、どちらも軍産複合体の代理人である。

石油輸出でサウジを抜いて、天然ガスでは圧倒的なシェアのロシアは、OPECに加盟しないで、独自の販売をしている。
実は、フセイン氏もカダフィー氏も、自国の石油を「自前」にして、国際石油資本(いまは6社)を、追い出した張本人たちだ。

トランプ氏も、シェールオイルの開発をして、アメリカを石油純輸出国にさせることで、OPECのカルテル:価格調整機能を弱体化させた。
このことで、中東からアメリカ軍を引かせて、アラブ諸国が宿敵イスラエルと歴史的な「和平」を結ぶことになったのである。

これは、「ナショナリズム」による「均衡」が、じつは人類に平和をもたらすことを示しているのである。
それはいわば、「個人主義」が原点にある。

個人の勝手気ままが、個人主義だと定義してはいけない。
「個」を絶対視する故に、「相手」の「個」も絶対視するのが、「個人主義」の定義なのだ。
これを、「お互い様」という。

フセイン氏やカダフィー氏が何者かを知っている「はず」と思われた、カイロ大学社会学部卒業の小池百合子氏がいう、「都民ファースト」とは、本来この意味の「はず」だったけど、「個人の勝手気まま」の、「自分ファースト」だったことがばれて、呆れるばかりなのである。

じつは、「個人の勝手気まま=自分ファースト」は、「利他主義」を意味するのだ。
一見ややこしいが、単純なことである。

権力者の権力をもって、他人に強制するときに、「みんなのため」をいえば済むことを思い出せばいいのだ。
「利他主義」には、「無限大の自己犠牲を要求すること」が内包されている。

それがついに、「みんなのためなら死ぬ」ところまで、「他人から」要求されるのである。
これが、「全体主義の恐怖」だ。

しかして、プーチン氏はNATO加盟に積極的ではあったけど、今となっては残念な結果になっている。
しかし、これは、ロシアの判断「だけ」が問題なのか?

ロシアの資源を、ナショナリストから取り戻したら、NATOに入れてやるよ、というのが、グローバリストたちの「本音」にちがいない。

それを、ウクライナでやっている。

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