「ノーパン」回帰の女性たち

「リスクがあるタイトル」であると自分ながらに思うけど、あえて書いておこうと思ったのは、それが「歴史的なこと」でもあるからだ。

わが国の歴史では、男女とも下着といえば「襦袢:じゅばん」であった。
男性は「下帯」としての「褌:ふんどし」を着用したが、女性は「腰巻き」が通常で、江戸時代前期までの「銭湯:蒸し風呂」では、男女とも「風呂褌」を着用していた。

この「褌」は、男女ともに「はきかえ」たというが、やっぱり男性は「褌」で、女性は「腰巻き(別に「湯文字」ともいう)」であったという。
なお、濡れた風呂褌を包むため、あるいは身仕舞いをするために敷いたのが、「風呂敷」である。

男性は、「褌を締めてかかる」ように、しっかりしておかないと、「(たまが)揺れて」それが続くと苦痛になってくるという事情があるのは、構造上そうなっているからである。

また、小便後に褌の前垂れで「露」を拭き取る行動は、誰かが「父の思い出」として書いている。
もちろん、これを書いたのは、幼かった女の子の目線での「思い出」なのである。

女性の方は、なにしろ「月のもの」がある。
洗ったばかりの赤い腰巻きを、何枚も戸板に貼りつけて乾かしている光景は、長屋住まいの男の子でも、顔を赤らめて通り過ぎたという。
実際問題として、再生和紙を褌に挟んでいたというから、生理の女性用の褌もあったのである。

しかしながら、それ以外の生活で女性が褌をつけることはなかった。
あくまでも、腰巻き、だったのである。
だから、日本人の歴史で、ついこないだまで、「パンツを履いたことはなかった」のである。

それに、和服でパンツを着用していると、しっかりパンティラインが出てしまうのもお困りなので、そうさせない工夫がされる。
その究極にして、昔からふつうが、ノーパンなのである。

太宰治の『斜陽』には、貴族出の「お母さま」が、公園で放尿する場面が描かれているけれど、和服だからできる「技」である。
わたしが子供だったむかしは、あんがいとお婆さんがそのへんで着物をめくって放尿していたふつうがあった。

もちろん、男性の立ちションは、あまりにもふつうだった。
それで、町内の電信柱とか板塀に、赤い鳥居の絵を描いた木札をかける家があった。
やっぱり、匂ったのだろう。

「軽犯罪」となって、立ちションが禁止されたのは、あんがいとニュースになったものである。
いまでは、「公然わいせつ罪」までにもなるから、よりいっそう「厳しく」なってきている。

そういえば、いまでは「伝説」の俳優、故萩原健一が演じた『太陽にほえろ!』での「殉職シーン」は、まさに立ちションの最中での出来事になっている。

さてそれで、「ノーパン睡眠健康法」がじんわりと流行っているとか。

日本では、丸山淳士医博がラジオを通じて1990年代あたりから提唱したというけれど、コロナ禍での自宅待機と健康ブームが重なって、女子高生にも拡がっているらしい。

その効果は、ゴムによる締め付けからリンパが解放されて、熟睡できる、というものだ。
もちろん、「睡眠」の健康効果は否定できないけれども、腹部の圧迫がなくなることで、「便秘解消」も期待できるという。

便秘といえば、むかしから女性の悩みの一つで、それがまた、「お肌」への影響となるから、まさに諸悪の根源なのである。
それに、酷暑による「蒸れ」も、ノーパンならない。

そんなこんなで、一度経験すると、適用範囲が就寝時から徐々に生活行動時間に拡大するという順をたどるのは、人間のサガである。
また、個人のプライバシーが家族内でも保たれるようになったことも、あるいは、「結婚しない」ことも、「普及条件」として重要な点である。

巷間にいわれる、「白木屋火災」(1932年12月16日)における女子従業員の大量死が、和装によるノーパン状態が窓からの飛び降り避難を阻害した、というのは、後付けの洋装下着メーカーによる「デマ」だと証明されていることは何度か書いてきた。

しかしながら、この事件以降、日本人女性はパンツを履くようになったのは、事実なのである。
つまり、昭和7年をエポックにしているのである。

これから、ちょうど90年の時を経て、日本人女性が「ノーパン回帰」しているのだ。
しかも、その理由が、わが国伝統の「健康感覚」との一致がみられることに注目したい。

すると、その次に「和装の復活」はあるのか?に興味がうつる。

いや、その前に、なぜに洋装でパンツを必要とするのか?に考えを向ければ、アウターを汚さないためであった。
しかし、それがたとえ洋装であっても腰巻き状のものであれば、その必要性は裾の長さに依存する。

ロングスカートならまったく腰巻きと形状は似ているので、ミニスカートにおける「見させない」が優先するのである。
ゆえに、「見せパン」なる「防御策」がとられている。

すると、もっと密着する「パンツ:ズボン」が、汚れ防止としての必要性において最大の問題になるのだ。
ならば、メーカーは、ノーパン用の製品を出すのだろうか?
そのための、モニター調査はもう行われているのか?

だったら旅館は、「はだけない浴衣」をもって、ノーパン睡眠を奨励するのか?

妙に、興味は尽きないのである。

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