いまさらモラル・ハザードの消費税

政府のポイント還元策を「暴力とおなじだ」と発言したのは、9日イオンの岡田元也社長の決算会見だった。

どうしてこんなに怒っているのか?
それは、「大手小売」のばあいはポイント還元策が「適用されない」という、なんだかわからないルールを政府がかってに決めたことだ。

じつは、「大手コンビニ」は、個々の店舗経営者のおおくが「個人事業主」や「中小企業」であるため、「大手」のはずなのにポイント還元が適用されるからである。
この「不公平」を怒っている。

はぁ?
というのが第一印象である。
ここには、「消費者」が存在しないからだ。

わが国で「流通革命」を起こしたのは、ダイエー創業者だったけれど、創業時に手書きで店舗に張られたキャッチ・フレーズは「主婦の店」だった。

すなわち、いまようにいえば、「顧客から愛される店」ということであって、それには、「顧客利益の追究」という信念がふくまれていた。

企業再生の現場で、「顧客利益の追求」ということをいうと、「われわれの利益はどうでもいいのか?」という経営者にであうことがままある。
顧客に利益をあたえたら、自分たちの利益がなくなるという発想をするのである。

そんな発想をしているから、企業再生という事態になったのだが、これに気づかない経営者はたくさんいる。

むしろ、どうしたら自分たち「だけ」が儲かるのか?を追究すると、驚くことに本当に消費者に所得移転するような「安売り」をすすんでするのである。
安くしたら販売数量が増えて売上も増えた、というささやかな成功体験しか経験していないから、それも当然なのだが。

ダイエーがどうなったかは、周知のとおりである。
いまでも「ダイエー」のカンバンで営業している店があるのはどういうわけだかしらないが、とっくに「イオン・グループ」になっている。

かつての流通革命の旗手「カリスマ経営者」といわれた中内氏にして、巨大化したグループになったら「主婦の店」をわすれてしまった。
それが「転落」の原因であり結果である。

一代の繁栄と衰退は、だれにも書けない長編小説のような、けれどもまさに事実だったのである。

そんなダイエー衰退のDNAを、まさかイオンに埋めこんだわけではあるまいが、岡田屋から巨大化したイオンにあって、いつか来た道にみえたのはわたしだけではあるまい。

いま、この国ではあらゆる方面で「モラル・ハザード」が起きている。

神戸の小学校教師による同僚へのイジメ事件は、とうとう子ども時代にやっていたことが、おとなになっても変わらないことを証明したし、元校長によるパワハラもあったというから、安っぽいTVドラマが現実になったわけだ。

しかし、この問題を所管する教育委員会こそが、もっとも他人事だから、なにがなんだかわからない。
ましてや、こうした事件を報道する側にも、じぶんたちの都合でシナリオ化して「報道」するから、視聴者には「憎悪」しかうまれないように仕向けている。

流通の場にもどれば、来年からはじめたい役人の意向をくんで、レジ袋の強制的な排除を推進すべく、各種検討会がおこなわれているけれど、こんどはレジ袋メーカーが倒産したり廃業に追い込まれる予想がでてきて、経産省がぐらついている。

言いだしっぺの経産省が、こんな「予想」もできなかったのかと、驚くのは国民の方で、ようやく不信感がちょっぴりできたのはいいことだ。

前にも書いたレジ袋有料化とは、関係省庁の「省令」だけで実施しようという暴挙だ。
国民にまんべんなく負担を強いることを「法律」で決めない。つまり、国会を通さないで実施するとはどういうことか?

このような手続き上の暴挙すら、衆参両院で国会議員が700人以上もいて、だれも問題視していないというモラル・ハザードがある。
香港でのデモをかんがえたら、日本でデモがおきないことは不思議を通り越して、「無感」としかいいようがない。

当然なのだが、イオンをはじめとした流通業のみなさんがこれに「賛成」なのは、経費削減以上の利益がでるからである。
無料で配付していたものが売れるのだから、その差額はぜんぶ利益になる。

たしかに「主婦」は小数派になったかもしれないが、「主婦(消費者)の店」というカンバンをかかげる小売業が消滅してしまって、自分たちだけが儲かればよい、というモラル・ハザードが蔓延している。

消費者の立場なら、この負担の根拠が「地球環境」という世迷い言なのだから、泣きっ面に蜂なのである。
レジ袋を食べて死んでしまう海洋生物はたしかに気の毒だが、その前に、レジ袋をきちんと捨てることが重要なのだ。

この手間をはぶいて、レジ袋を禁止すればあたかもすべてうまくいくのだとかんがえる浅はかさをだれもいわないことがモラル・ハザードなのである。

消費税の増税理由だって、十分にモラル・ハザードだし、軽減税率の適用ルールだってモラル・ハザードしている。なのに「イート・イン脱税」という倒錯がいわれるのは、まっさきに軽減税率の適用を確約された新聞社が親会社のテレビ局だからか?

こんなモラル・ハザードだらけの国がどうして発展などするものか?
香港住民の40%が移住を希望する事態となったが、移住希望先にわが日本国がランクインもしないのは「難民」すら忌諱する国に成り下がったのだ。

何のことはない、香港をいじめている大陸の国と同然視されているのだ。
こんなことにも気づかないのは、モラル・ハザードを超越してぜんぶ壊れたからか?

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