副業の残業代はだれが支払うのか?

企業が「稼ぐ自信」をうしなって、とうとう「副業」をゆるすようなことがトレンドになってきている。
従業員が満足できる賃金をはらえないから、どこか別の職場で稼いでもいいよ、という「軽さ」が気になる。

「賃金」というものは、なにか?
たんてきに、「労働の対価」である。
だから、「労働」の価値と「対価」というおカネが、どうなっているのか?ということが出発点になる。

ろくに仕事をこなしていないのに、たくさんの対価をはらうことはできない。
いっぽうで、ちゃんとした仕事をしているのに、これっぽっちしかもらえないのではこまる。

けっきょく、このふたつを結ぶのは、あたりまえだが「仕事」なのである。
つまり、その「仕事」が価値をつくっているのか?いないのか?という問題だ。

物理では、なにかの物体にはたらきかけて、それでなにかがおきることを「仕事」というから、「仕事」があたらしい価値をつくったかどうかは問わない。
しかし、ふつうの企業でそんな「仕事」を「仕事」といったら、お客さんからおカネがもらえないから「ムダ」になる。

つまり、企業内の「仕事」は、お客さんからおカネがもらえるものを指す。

経営者と従業員が、以上のことで同意がとれていればいいが、どこまでがおカネになる「仕事」で、どこまでが「ムダ」なのかがわからなくなっていることがある。

それが、時間経過のなかで「むかしからやっている」だけが理由になると、ほとんど「ムダ」の部類になる。
それで、たまには「仕事の棚卸し」ということをやって、自己チェックしないと、わかるものもわからない。

従業員はいそがしく働いているのに、会社がぜんぜん儲からないのは、およそこの「ムダ」が「仕事」になっているからである。

ならば、どうやって「棚卸し」をするのかといえば、白紙から業務を設計し直しのがいちばんわかりやすい。
けれども、手間がかかる。
それで、この手間をはぶいて「棚卸し」するから、たちまちなにが「仕事」でなにが「ムダ」かがわからなくなる。

従業員は、いつものやり方を変えたくないから、ぜんぶ「必要」な「仕事」だとこたえるから、現場にいっても解答がみつからない。
こうして、いつまでたっても「ムダ」に経費をかけて、儲からない。

それで、どこか別の職場をみつけて、そちらでも働いてよいということになれば、従業員はおカネを効率よくもらえるのがどちらかすぐに気がつくから、元の会社で残業せずに、あらたな稼ぎ先に急いでいきたがるだろう。

だから、元の会社では残業代がへって、よかったになるのだが、ほんとうにそれで儲かるようになったとはいえない。
ほんらい今日やるべき「仕事」が明日に後回しされれば、納品期限が間に合わないから、「ムダ」だけが自動的に削減されるということでもない。

このはなしの行き違いは、あたらしい稼ぎ先でも発生する。
元の会社ではたらいた時間が、もしもフルタイムなら、副業先のあたらしい稼ぎ先では、「残業代」がストレートに発生しなければならない。

けれども、副業先をさがすのに、自分はフルタイムではたらいた後だから、こちらでの仕事には残業代をつけてください、というはずがない。
それに、採用する会社だって、出勤前にどこかで働いていますか?ときくことはないから、けっきょくこのはなしはどこにもでない。

それでそのままならいいけれど、なにかのことで「労災事故」でも発生すれば、たちまちに本人の「働きかた」が調べられることになって、いきなり表沙汰になるのである。

役所というところの特性で、鬼の首を取ったようなことになるのは当然で、これに残業代も請求できるという知恵があたえられれば、たちまちどちらの会社に請求すべきなのかが議論になる。
当然、役所はどちらでもいいから払えというだけだ。

さて、本人はどうしたらいいものか?
元の会社も、副業先も、どうしたものかとなって困り果てるのである。

このはなしの原因はなにかといえば、やっぱり「36協定」がないことにある。
「働く」ということについての、「働く側の無知」と「働かせる側の無知」との掛け算になる。

学校をでた若者が、「働く側」として労働力を提供するあたっての、「働く側の無知」を解消してくれるセミナーがない。
そして、「働かせる側」すら、経営者にそれがどういうことかをつたえるセミナーがない。

あるのは、役所という変な存在だけがみえてくる。
ほんとうに、このひとたちはなにをやっているのか?
こうした教育をすべきだが、法律にないからできないのだ、といえばまだしも、このときとばかり受身の「行政官」に徹するからたちがわるい。

こうして、副業の残業代は宙に浮いて、とうとう宇宙をさまようのである。

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