共産党宣言を実行する安倍内閣

「いまさらですがソ連邦」という本について書いたから、いまさらだけど『共産党宣言』を読んでみて、どこかでみた項目が載っていたからおどろいた。

どのくらいの日本人が、マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』を読み込んでいるのかはしらないが、でた当時は「発禁」だったから、さぞやおおくの知的エリートたちがこぞってないしょで読みふけったことだろう。

もちろん、崩壊したソ連・東欧という事実の歴史をしっているし、中国も共産党の政治支配はあるが、改革解放という名目で資本主義経済を採り入れてしまったから、この地上に純粋のマルクス主義の国家なんて存在しないとほとんどのひとが信じている。

あにはからんや、わが日本国という「成功した」共産主義国がある。

いまさら感をたっぷりもって『共産党宣言』を読むのは、あるいみ知的好奇心をみたしてはくれるが、くれぐれも、この本の内容は「空想」にすぎない、ということをわすれてはならない。
いってみれば、『不思議の国のアリス』を読んで、それが現実だとかんがえたら「あぶない」ということとおなじだからだ。

 

そういういみでいえば、むかしのひとたちの想像力は旺盛であった。
『共産党宣言』が現実だと信じるまじめさは、その後の独裁政権による数千万人がこうむる悲惨の原因となるからである。

それは、やり方がまずかったのだ、という理由をあげて、共産主義はまちがっていない、と主張するひとたちもいる。
これを論破したのが、ハンナ・アーレントのしごとで『全体主義の起源』という大部冊がある。

あんまりの大部冊だから、NHKの番組をみなくても上記のテキストであんがいちゃんと説明してくれているのは、ありがたいことだ。
もちろん、知的好奇心旺盛なひとは、原典を読破されんことを。

さて、それで、『共産党宣言』にどんなことが載っていておどろいたのかにはなしをすすめる。
それは、「第二章 プロレタリアと共産主義者」に、共産党の政策を「10項目」挙げているのだ。

1.土地所有権の剥奪、および地代を国家の経費にあてること
2.強度の累進所得税
3.相続権の廃止
4.すべての移出民および反逆者の財産の没収
5.国家の資本をもって全然独占的なる国立銀行をつくり、信用機関を国家の手に集中すること
6.交通および運輸機関を国家の手に集中すること
7.国有工場の増大、国有生産機関の増大、共同的設計による土地の開墾および改善
8.すべてのひとに対して平等の労働義務を課すこと。産業軍隊を編成すること(ことに農業に対して)
9.農業と工業との経営を結合すること。都会と地方との区別を漸漸廃すること
10.すべての児童の公共無料教育。現今の形式における児童の工場労働の廃止。工業生産と教育との結合等。

かくて、発達の進行につれ、階級的差別が消滅し、すべての生産が、総個人の協力(全国民の大組合)の手に集中されるならば、そのとき公的権力はその政治的性質を失う。

とある。(青空文庫版:堺利彦・幸徳秋水訳、より)
訳がふるいのはしかたがない。

1は空き家対策として、あるいはオリンピック選手村、2はすでにおこなわれているし、4は「出国税」として海外移住するひとたちへのたくらみが進んでいる。

5は、平成バブル崩壊後に政府から日銀を独立させる日銀法ができたのに、安倍内閣はこれを「正す」(政府配下にもどす)と脅して、白川氏から総裁の座をうばった経緯があるし、金融庁が全国の金融機関を支配している。

6は、国鉄の民営化をもってあたらない、というわけにはいかない。
国土交通省という役所が、金融庁とおなじやり方ですべて(陸・海・空)の交通機関を支配している。

7は、産業革新機能がやらかした失敗に象徴されるが、金融庁や国交省と同様に、経産省がわが国の「産業」を支配している。

9は、日本版コルホーズの農協と、国土総合開発計画があたる。震災以後は「国土強靱化計画」に看板をすげかえている。

10は、いま、まさに推進されようとしている。児童手当の露骨な変容で、授業料がただになれば、学校に文句をいいにくくなるし、教育委員会という無能官僚集団をより強化することがほんとうのねらいだ。

そして、「かくて」以下の文章の非論理性は、まったくお話にならない。

いかがであろうか?
歴代自民党政権も、細川政権も、民主党政権も、共産党宣言の政策をまじめに実行してきたのだ。
つまり、わが国は、みごとに共産主義国家になろうと努力してきた。

なるほど共産党のかげがうすくなったのも、政権党がこぞって共産党のあるべき政策を追求しているからにほかならない。

そして、この「事実」が、わが国衰退の原因なのである。

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