経営に失敗する常識

「経済学」に詳しいと

経営に失敗する経営者には,よく勉強したひとがおおい.その典型的な勉強分野が,「経済学」である.ところが,この経済学,さすがにマルクスは影を潜めたが,日本ではいまだにケインズを中心とする混合経済の近代経済学が一般的だ.それをいまでは,「主流派経済学」と呼ぶ.これは,政府が中心となって,様々な「景気対策」などの「経済政策」を行うことをあたりまえとしているもので,いろいろな分野での「補助金」も,政府の「政策」が根拠になっている.つまり,政府がなにかしてくれる,という他人まかせの社会をつくる.だから,自社の業績は経済状況に左右されると発想し,それを政府に改善して欲しいと願うようになる.新聞などの「世論調査」で,いつも大きなウェートを占めるのは政府による「経済対策」や「景気対策」になることでもわかる.

しかし,現実には,いかにして他社より自社が選ばれるかという「競争」がおこなわれているのであって,経営者は,その競争に負けない方策をかんがえるのが仕事である.ここに,政府のでる出番はないのだが,とかく政府は経済に介入したがり,「補助金」とかを渡すかわりに,政府の言うことをきかせるように仕向けるのだ.安易にお金の支給を受けようものなら,後々まで規制をかけられて,しらないうちに自由な経営ができなくなる.

困ったことに,主流派経済学の学者も,その学者から熱心に学んだ官僚も,経済界のえらい人も,「消費」についてすら現実からはなれた発想をしている.ひとくちに「消費」といっても,生活必需品を購入する消費と,不要不急「競争」がおこなわれていての贅沢品を購入する消費とでは意味がちがう.贅沢品は「奢侈品」として役人が分類すると課税されてしまうから,さらに別の意味もある.
教科書どおりの通り一遍な主流派経済学者は,消費の金額的側面,つまり統計データしかみない.「効用」という言葉が経済学にもあるが,ほとんど無視するのが主流派経済学という「学問」の特徴である.マーケティング情報として消費をみるときは,事前期待と事後の満足度の一致具合が興味の対象になる.購入前の「欲しい!」という想いと,購入後の「買ってよかった」とか「失敗した」とかの感じ方のギャップの大小のことである.つきつめれば,消費者がお金を払うとき,『製品やサービスの「期待価値」を買っている』といえるのである.
マーケティング論における大家,セオドア・レビットによれば,経済学者はまったくわかっていない,と嘆くポイントだ.たとえば,パンとダイヤモンドの消費をかんがえるとき,経済学者は,パンはパンとして,ダイヤモンドはダイヤモンドとしての価値しかみないから,それぞれの消費データを分析しようとする.物理学者や化学者は,どちらも「炭素」からできているので,同じ素材の物質にみえる.マーケッターは,パンを購入するときの期待価値,ダイヤモンドを購入する時の期待価値,という「期待価値」という同じ目線でみつめるのだ.ここに,決定的なちがいが生まれる.

消費者をみないで消費データしかみない

経済学者と同様に,失敗する経営者にとっての消費データとは「売上高」のことである.全社でいくら,部門別でいくら,子会社ごとにいくら,というように「売上高」を塊としてみる.そして,これを「損益計算書」という「計算書」としてまとめられた数字の「表」しかみない.部下や責任者からの報告も,この表の「仕訳ルール」(おおくは「税法」による)によってできた「経費科目」によってなされる.比較の対象は,今期と前期,あるいは前々期からの伸びや縮小の率や額である.

これは,「数字ごっこ」である.

この程度の「分析」から,将来を決定するとして,なにをきめることができるのだろうか?日本企業は「決められない」ことに特徴があると揶揄されて久しいが,それは本当である.しかし,「決められない」ことの理由の分析すらできていない.答は簡単なのである.「数字ごっこ」をしていることが原因の大きな要因なのだ.過去の「損益計算書」という書類には,「将来を決めるための情報がない」から,どんなにほじくっても,「決められない」のは当然だ.

決めるための情報は,消費者の選択行動分析である.

とっくにコンビニ業界がそれを証明している.自社にお金を払ってくれる唯一の層は「消費者」である。これは、たとえ「B to B」でも同様である。最終的なユーザーである「消費者」こそが真の負担をする唯一の存在である。自社の製品・サービスの「期待価値」をいかに高めるのか?そもそも,現状の「期待価値」をどう評価するのか?主流派経済学の知識ではわからないことなのだ.

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