国防政策委員会委員の本

ルーマニア生まれのルトワック氏ら8人が、12月14日に「新」国防政策委員会委員に任命された。
この日は、大統領選挙の選挙人投票日でもあったので、勝利「確定」とした民主党は「新政権」に対する嫌がらせとしてこの人事を批難した。

「新」というからには「旧」がある。
11月30日に、元国務長官ヘンリー・キッシンジャー氏とマデレーン・オルブライト元国務長官を含む11人の国防政策委員会委員を解任したのだった。

「ワシントンの沼の水を抜く」という、ことごとく実行したトランプ氏の公約で、唯一残った政策を、あくまでも実施したのだと見れば、これらの人物たちは、まさに「沼」に棲息していると見られても納得がいく。
共通のキーワードとなるのは、「あの国」との関係である。

とにかく、ニクソン・ショックのひとつに数えられる、歴史的・電撃的な国交樹立は、世界を驚嘆させたことはまちがいなく、そのお膳立てをしたのがキッシンジャー氏だった。
あれから、半世紀、このひとが健在で、しかも重要ポストの国防政策委員だったことが驚きである。

オルブライト氏は、クリントン政権のときの国務長官だ。
この手の話に「性」をいうのはいかがかとおもうけど、世に「初」の女性国務長官といわれた。
もとは、チェコのプラハ生まれのユダヤ系(本人はカソリック)である。

なので、ナチスから逃れることになったのだけど、どういうわけか民主党よりのひとである。
カーター政権では「国家安全保障会議」のスタッフを務めている。
いまは、自分の財団の長として、「あの国」との関係でコンサルタントをやっていることが、さまざまな疑惑を生んでいる。

本稿で話題にするルトワック氏は、ルーマニア生まれで、母国の共産化によってイタリアに逃れ、その後イギリス国籍を得るにいたるから、少しだけオルブライト氏にダブルのだけれど、方向は真逆になっている。

「戦略」に関する現代の世界的権威のひとりだ。
こうした人物が、わが国のことをテーマにした著作があるのは、興味深い。

 

そこで、少しだけ本書に踏み込むと、わが国の戦略テーマは、「若返り」だと指摘している。
しかも、その発想の基本に、「国防は最低限の福祉」と明言している。
わざわざ書かないといけないところに、日本人への戦略がある。

なぜなら、日本人にとって、いつの間にか福祉とは、「公的年金」や「公的健康保険」あるいは「老人福祉」になってしまったからである。
もちろん、介護保険もこのなかにふくまれる。
すこし、範囲を広げれば、たとえば「財形貯蓄」や「NISA」もある。

つまり、「おカネ」に関する各種の制度だと思い込んでいる。

けれども、国家が国民に提供する福祉で、もっとも重要なことは、「安全保障」なのだ。
なにも外国のえらいひとからいわれる筋合いではないけれど、もう、わざわざいわれないと、わからなくなっている。

もっといえば、もしや「怒り出す」ひともいるかもしれない。
これを、「絶対的平和主義」といえばそれまでだけれど、「いいひと」に多くみられる現象なのが困りものなのだ。
さらに症状がすすむと、「平和憲法」を持ちだす活動家になる。

この「いいひと」たちは、こちらから手を出さない限り、周辺各国の善良な国々が悪さをするはずがない、と心から信じているか、特定の政治体制の国の属国になることが幸せなのだと信じている。
困るのは、この信仰を他人にも強要することだ。

すると、国境を堅く守る国家の行為を「わるいこと」とするので、いかんせん、安全が脅かされても放置することが「平和」になるのである。
こうしたことを勝手に信じる分には勝手だけれど、ちょっとでも実現されたら多くのひとが犠牲者になる。

だから、こうしたことを「わるいこと」としないと、国がもたない。

すると、「国」とか「国家」とかいうのが「古い」という話になって、「国境なき世界」すなわち、「グローバリズム」が正義だといいいだすのである。
そして、それが、「人類は一家」とか、「八紘一宇」とかいう、「理想」となるのだけれど、どういうわけか「それは右翼」だと否定する。

ならばなにが理想かときけば、「SDGs」とか、「持続可能な社会」という。
ぐるっと回って、180度、地平にあるという意味で「右翼」とどこがちがうのか?まったくおなじをわざわざ正反対という。

わが国が独立するにあたって、同時に発効したのが「日米安全保障条約」だった。首輪で絆(ほだ)されたのに、日米の絆(きずな)という。
過去には二度ほどの大きな反対運動があった。
「60年安保」と「70年安保」である。

60年の安保反対デモに参加したと自慢していた叔母に、安保条約のどこがまずくて反対したのかと質問したことがある。
するとあっさり、そんなもん読むわけないでしょ、と一喝された。
じゃあなんで?としつこくきいたら、「岸が嫌い」だった。

それから10年したら、発想も世代もちがうひとたちが「反対」を唱え、運動がどんどん分裂しながら過激化した。
さらに10年したら、「80年安保」なることばもなくなって、いまは、「同盟国」でおさまっている。

でも、同盟には条件があって、「自国の安全保障に真剣に向き合わない国は、アメリカにとって同盟国とは認められない」と書いているひとが、このたび国防政策委員になった。

ただ単純にアメリカが守ってくれる、ということではない。
トランプ政権が、アメリカで戦後初めて、「日本の自立」を本気で促しているのは、「アメリカ・ファースト」だからである。

日米の絆はそのままに、絆しを解除するといっているのだ。

日本がふつうの国になる機会が、戦後はじめてやってきた。
だから、反トランプが、わが国ではびこるのだ。
自立したくない。

さてはここに、どんな「戦略」があるのか?

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