「萩」に行ってきた

久しぶりの遠距離出張である。

山口県には、人生二度目の訪問となる。
前回は、ほぼ30年前、ブルートレインの寝台特急「出雲」に乗って、島根県からレンタカーで移動した。
横浜駅を21時40分頃の発車であった。

慣れない車の運転は、あんがいと気をつかうので、景色を楽しむ余裕がない。
それでか、目的地となった、萩や津和野、秋吉台、湯田温泉は、「点」として記憶していたが、「線」になってはいない。

今回は、「出張」なので、新横浜から新山口までは新幹線、それから高速バスに乗って萩へと向かう。
わが家から市内の宿まで、ドア・ツー・ドアでぴったり8時間半の旅となった。

北陸新幹線の開業前、上越新幹線で越後湯沢まで行き、それから特急「はくたか」で金沢に向かい、金沢からは北陸本線の特急「しらさぎ」で米原に出て、東海道新幹線で帰宅したことがある。
本州の中央部をぐるっと回った。

なにもこんなことをしなくとも、日本が「山国」であることは誰でも知っているけれど、実際に車窓をながれめば、「ひしひしと実感」できる。
これは、この夏8月29日に開通した、中部横断自動車道における、橋梁とトンネルの連続でも同じことがわかる。

新大阪から西にはめったに行かない生活をしているので、山陽新幹線の旅は特別感がある。
しかし、大阪平野の端から「六甲トンネル」を抜けた、新神戸駅が、妙に「熱海駅」と似ているのである。

そして、ここからは、トンネルと平地と川を渡る橋の「パターン」が何度も繰り返される。
この意味でいえば、変化に乏しい景色なのだ。

しかしそれは高速で移動しているからで、そこに住んでいる人たちの生活エリアという観点に立ち戻れば、山の向こうとこちらでは、違った生活文化圏が狭い範囲で存在しているに相違ない。

中国山地という、山陰と山陽を分断する地形は、いよいよ山口県に入ると「圧縮」された感がある。
新山口駅と萩とを結ぶ高速バスは、あっという間に「山間部」を、中部横断自動車道のように進むけど、「山深さ」という点では、山口県の方が上手だろう。

「カルスト台地」で有名な秋吉台は、30年前に入った鍾乳洞の美しさを思い出させてくれるけど、「サンゴから火山へ」というジオパークの看板が目に止まった。

30年前には気づかないことがある。
この山々は、サンゴ由来の石灰岩でできている。
太古の昔は海だったわけではあるが、サンゴが育つ海とは、いまでも南洋に限られる。

すると、いきなり「地殻変動説」が頭をよぎった。
地球の表面を覆う「地殻」は、ミカンの皮よりずっと「薄い」ほどの比でしかない。
皮にあたる地殻と中身にあたる地球内部とが「ズルッとズレた」という説である。

いまのオーストラリア大陸あたりの「緯度」にあった大陸が、南にズレて南極大陸になり、アフリカ大陸あたりの緯度にあったユーラシア大陸が、今の位置にズレて、象の祖先「マンモス」が永久凍土の下で、「パーシャル冷凍」された。

北極付近のアメリカ大陸も南にズレて、氷河が一気に溶けて流れてできたのが「グランドキャニオン」だというのである。
ならば、中国山地の元になった珊瑚礁も北にズレて、今の位置になり、隆起したのだと素人発想が湧き出した。

ところで、サンゴの骨格は「炭酸カルシウム」である。
これが「石灰石」になる。
酸によって溶けてできたのが鍾乳洞だ。
すなわち、鍾乳洞ができるとき、「炭酸ガス」が発生する。

「脱炭素」とかいうバカバカしさを、山口県のひとたちは意識しているのだろうか?
近代日本の礎をつくった人材を輩出したのが「長州」だ。
その中心地、萩には、明倫館という「藩校」があって、いまでは様々な「セッション」が開催されている。

広島ナンバーやら、中国地方の観光バスが、小学生、中学生の修学旅行生を運んできていた。
今でも「教育センター」なのである。

そんなわけで、萩のひとたちの「誇り」は、そのまま強い「郷土愛」を生んでいる。
これが、「保守王国」のゆえんだろう。

意外なのは、萩の「選挙区」で連続当選していたのは、「売国」で有名な河村建夫元官房長官だった。
宏池会の重鎮で、参議院議員で元文科相の林芳正氏が、今般の総選挙に打って出ると意思表明したら、地元自民党の推薦から河村氏が排除され、そのまま政界引退となった。

河村では勝てない、ということだったらしい。

「勝ち馬に乗る」というのも伝統なのだ。
しかして、炭素を目の敵にするのは、保守を攻撃するための「革命思想」なのだと気づいている感はなく、あんがいと脇が甘い。

安政の大獄で、吉田松陰が29才(数えで30才)の生涯を終えたのは、1859年のことだから、162年前のことだ。
それから、神様になった松陰神社は立派な境内である。

もちろん、吉田松陰は「えらいひと」ではあるけれど、何がどんなふうに偉かったのか?
あんがいと答えられない「萩人」はおおかった。

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