きれいなゴミの展示場

中央集権国家の首都東京には,一極集中と文句をいわれようが,なんでも集まるようになっている.
その首都の「中央区」は日本橋に,全国の地方自治体がつくったパンフレットが一堂に会される特別な場所がある.
「ふるさと情報コーナー」という.

都道府県別にきちんと並んだ棚に,ぎっしりと約2,600種類ものパンフレットがあるそうだ.
これを維持するのは,たいへんな努力と労力がいるにちがいない.
一般財団法人が,その手間を引き受けているから,利用者は感謝しなければならないだろう.

2,600種類のパンフレット全部に目を通すことはできないが,ランダムに拾ってみて驚くのは,その内容の乏しさをこえた「無さ」である.
これらのパンフレットの製作意図は,単に「予算消化」ではないかとうたがうのだ.
どうしたらこうなるのか?

「資源ゴミ」と称して,住民に回収の手間をかけさせて,じつは中国に輸出してお金を得ることを「環境政策」というらしいが,これらのパンフレットおよび製作の手間が,すべて「ゴミ」ではないのか?
すなわち,「きれいなゴミの展示場」になっているのである.

「ゴミ」としてみれば,全国の自治体がお金をかけて,ほとんど「内容がない」という同一のクオリティをもってつくることに,おおいに驚かざるをえない.
つまり,突出した品質=利用者が便利におもう内容,の物をみつけることが,まるで宝探しのようになっていて,それがめったに見つからないのだ.

この見事なまでの「横並び」を目の当たりにすると,はたして「予算消化」というレベルで済ますことができるのか不安になる.
それはそうである,全国の自治体が,揃いも揃って「ゴミ」をつくっているのだ.
それは,まるで,役に立つものを作ってはいけないという統一ルールがどこかにあるのではないか?とかんがえることの方が合理的だからだ.

すると,やはり都心を中心にした,都道府県のアンテナショップが,より一層に注目の対象になる.
「アンテナ『ショップ』」だから,ものを販売している.
このお店の運営は,道府県単位の自治体であろうから,店員には地方公務員がいるはずだ.

千代田区の平河町には,公益財団法人になっている「都道府県会館」がある.
ここには,広島,高知,大分の三県を除く「東京事務所」が入居している.だから,アンテナショップの職員も,おそらく「東京事務所」の配属で,勤務先が『ショップ』なのだろうと想像できる.

つまるところ,東京事務所が「上屋敷」で,ショップが「下屋敷」なのだろう.どちらも,「屋敷」の維持が最優先だから,なにか仕事をしている振りをしていればいい.
「本国」の県庁が,なにを売るのかを決めるから,上・下の屋敷ともに,なにをするではないという状況になるのである.

簡単にいえば,どの商品がどう売れて,どの商品がなかなか売れなくても,直接の担当者には,どうでもいいことになる.だから,サンプルが欠品状態になってもお構いなしでいられる.
ましてや,店内におかれた観光パンフも,適当に補充すればよく,もっとも面倒な客は地元出身者という,情報知識が豊富なひとになるだろう.

地元の詳しい情報を問われても,もともとそんなものに興味もない役人が,しっている知識などほとんどないのだ.
だって,たまたま東京に転勤になったにすぎないからだ.むしろ,いまのうちに東京人になりたいとかんがえている.

それで,元をたどれば,本国の県庁では,アンテナショップでの販売をしたいひとを「公募」する.このときの,選定基準は県内での販売「実績」になるから,かならず「定番」がえらばれる.
それで「アンテナ」というから,はなしが厄介になる.

有名どころが立候補しなければ,地元商工会をつうじて出品を要請したりするから,「公募」すらあやしい.
いまどきの気の利いた経営者は,これにつき合うことは時間と手間の無駄としっているから,力をいれるのは自社HPで,県庁のアンテナショップではない.

かくして,消費者は適度に珍しがるが,だからといって「ファン」になるわけでもない.
それは,発信する情報の焦点がボケていることにほかならない.
しかして,消費者はそのボケた点をいちいち指摘はしない.
面倒くさいし,どうせ言ったところで相手は地方の役人だからどうでもいい.言われる役人も面倒だとおもうから,ここでバランスがとれることになる.

こうして,今年もゴミのパンフレットが全国で量産される.
資源ゴミを率先してつくっているのは役所なのである.

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