スー・チー氏は「いい人」なのか?

昨日の1日、ミャンマーで事前に予告されていた軍部によるクーデターが実行されたと報道された。

これによって、国家最高顧問だった、アウン・サン・スー・チー氏、現職大統領など与党(国民民主連盟:NLD)幹部が拘束され、軍部出身の副大統領が大統領代行に就任したと発表があったという。

クーデターの理由について軍は、昨年秋の与党が圧勝した総選挙による「不正」だと説明している。
ミャンマーの人口は、2020年4月1日の推定で、5,458万人とされていて、不正投票が860万だというから、総人口の16%にあたる。

有権者を分母にすれば、想像以上の「不正」になるだろう。
しかし、「不正の証拠」についての説明はまだされていないから、今後の情報に注視したい。

例によって、役に立たないわが外務省は、現地大使館の「情報収集」と、在留邦人への「不要不急での外出自粛を呼びかける」という、間抜けなことを実施していると自分で発表している。
また、謝謝茂木大臣は、「民主化がなんとか」と寝ぼけたことを発表した。

現地での情報収集なら、まずは、昨秋の総選挙について「不正」のレポートを確認したいところだ。
本省への公電による報告には、なんと書いたのか?
まさか、「与党の地滑り的勝利」なんて、現地紙のトップ見出しをそのまま訳したりして?

次が、軍によるクーデター予告である。
スー・チー氏も事前に認識していた様子だけれど、はたしてわが大使館の「情報網」に、キャッチされていたものか?
むしろ、現地の日系商社の方が先で、家族はとっくに買いだめをして「巣ごもり」準備をしていたかもしれない。

緊迫した「やばさ」について、現地の邦人婦人会をつうじて、大使館員の夫に伝えられたやもしれぬ。

軍によるクーデターの2大成功要素は
1.軍の一体運用
2.放送局(いまならネットも)支配
であるから、ことが起きたら、情報・通信が遮断されることは、「セオリー」だ。

わが国の、5.15(1932年:主に海軍)も、2.26(1936年:主に陸軍)も、失敗に帰したのは、軍の一体がなかったからである。
なにせ2.26は、大元帥陛下によって、「賊軍」とされたのだ。
ただし、電力封鎖(変電所襲撃)とNHKは押さえていた。

ことが起きてから、なんだか対応しているように見せるのは、ムダとはいわぬが、肝心のその前のことがわからない。
国民がわからないままなのは、なにもしていなかった、という意味になるけど、外務省はそれでいいのだろうか?

報道機関も一斉に、ことが起きてからのことばかりなのだ。
こちらも、例によって、「特派員」がいるのに。
すると、大使館と「つるんで」なにもしていなかった、という意味になるから、大使館の情報収集のアリバイ崩しを記事にしない。

同類相哀れむ、ということで一件落着。

悪いのは、面倒な事態を起こした「軍」なのだ、ということにしている。
これが、わが国の関係者だけでなく、「世界中」のことであるから、どちらさまもおなじ論調で、「軍」が悪いことにした。
暗黙の了解とは、このことだ。

そもそも、スー・チー氏が長らく自宅軟禁されていたのはなぜか?
ミャンマー(むかしは「ビルマ」といった)の歴史をたどれば、イギリスの植民地から、日本の占領という流れは消し去れない。
日本の占領がおわるときを描いたのが、『ビルマの竪琴』なのだ。

  

原作者、竹山道雄は、その一貫した自由主義ゆえ、戦後(左翼)論壇から危険視され、ついには無視されるという悲劇がある。
当時のわが国を代表する知識人としての語り口は、丁寧でわかりやすい。

人間のややこしさは、たとえば、自由主義の本家であるはずのイギリスが、ときにむき出しの欲望に駆られて、帝国主義を完成させたことにも見られる。
大英帝国の栄光を支えたのは、アジアの悲惨であった。

インドや東南アジアが酷いことになった理由のひとつに、「戦略物資」の存在がある。
大戦争以来ずっとこの方、「石油」がそれで、おかげで争奪戦が繰り広げられる中東は平和から見放されてきた。

では、その前のエンジンやプラスチックがなかった時代はというと、「胡椒」だったのだ。
これを求めたヨーロッパが、供給地のアジアをこぞって我が物にした。
和食を中心としたわが国は、そこまでして胡椒を求めず、哀れなアジアの解放を理想としたとき、決定的な対立となったのである。

ここには、「人種差別」という別のキーワードがからむ。

そんなわけで、スー・チー氏の父、アウンサン将軍は、はじめ日本と共闘したが、敗色濃厚の日本を追い出して安定の大帝国・英国側についた軍人だった。
それで、スー・チー嬢はオックスフォードで教育を受けることになった。

彼女をいまでも英国やヨーロッパ諸国が支援する理由がこれだ。
しかしながら、こうした外国からの援助や恩恵を公然と受ける立場では、自国憲法で「大統領になれない」という当然の憲法規定がある。
軍事政権時代の憲法だという批判もあるが、アメリカでも資格なしだ。

なので彼女は、自分を大統領より「上の立場」と公式に発言した。
なお、彼女が日本語を学んだのは、オックスフォード大学で、その理由は、父将軍の日本における行動を研究するためというから、「裏切り」の正当理由をしりたいのだろう。

彼女の時代遅れのような、大英帝国流の思想から国民を支配する行動が、イスラム系住民たちへの弾圧、「ロヒンギャ問題」となったのである。
そんな彼女を、欧米と一緒になって支援する道理が、わが国にあるのか?
彼女の「日本嫌い」の理由は、あんがいとわかりやすいが、根深いのだ。

さてそれで、彼女は「いい人」なのだろうか?

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