問題には三種類がある

ここでいう「問題」というのは、「試験の問題」のことではない。
試験の問題は、別に「設問」ともいって、「問いを設定した」ものをいう。
つまりは、「出題者」が存在する。

出題者が、なんらかの意図をもって「設定」した「問い」を、受験者が「解く」という方法で、受験者の能力を調べるということになっている。
出題者から、上から目線でつくられているのである。

しかし、一方で、受験生を指導する立場にあるひとたち、たとえば予備校講師にとっては、「出題」された「問題」を分析するという仕事がある。
それは、「解き方」だけではなく、どのような「出題意図」なのかも対象になる。

こうして、「傾向と対策」という手法が開発されて、この手法を「販売」することが商売になるのである。
当然ながら、この場において、「需要と供給」の大原則が存在している。

ヨーロッパでは、あえて「中国式」といわれている「試験制度」のことが、公務員採用試験をさすのは、人類史でのはじめてが「科挙」であったからである。
中世の封建時代は、貴族が役人でもあったから、「生まれ」が重視されたが、近代ではそうはいかなくなった。

わが国も、武士に生まれないと「役人」にはなれなかったから、身分制の替わりに学歴制をあたらしい身分制に置き換えたのである。
よって、「役人」による上から目線に変化が起きることはないし、経済が疲弊した地方にいけば、主たる産業が「県庁・市役所」になっている。

それで、本来の「問題」とはなにか?に話をもどすと、「問題」になるには、じつは、「理想」がないといけないのである。
ここでいう「理想」とは、「あるべき姿」のことである。
その理想と現実の「差」のことが、ふつう世間一般に「問題」といわれているのだ。

これを、企業活動の場面にしてみれば、予算と実績の「差」をどうやって埋めるのか?ということが、さっそく「問題」になる。
そこで、この「差」そのものの「区分」として「問題の種類」をみつけることができる。

・みえる問題として、火消し問題
・みえない問題として、発見問題と予測問題がある。

みえる問題を、「火消し問題」というのは、だれにでもわかる「問題」だから、すぐになんとかしないといけないと、これまた、だれにでもわかるからである。

よくある、「問題がたくさんありすぎて、どこから手を着けたらいいのかわからない」という状態は、この「火消し問題」が山積しているために発生する。
まさに、マッチ一本から、大火災になってしまったごとくである。

しかし、真の問題は、「みえない問題」になって隠れていることがおおい。
そのひとつが、「発見問題」というもので、探さないとみつからないから、問題のありかを「探索」しないといけない。

つまり、問題の根っこを探る、ということだ。
みつけることができて、これを解決すれば、問題そのものが雲散霧消する。
問題の根っことは、「原因」のことである。

すなわち、原因追及して、問題の根源を発見する能力がまず問われるのである。
原因がわからなければ、解決方法もみつからないからである。
逆にいえば、解決方法を得るために原因を追及するのである。

みえない問題のもうひとつは、「予測問題」という。
将来、こんなことが問題になるのではないか?という「予測」にもとづく。
そのために、あらかじめ解決方法をふくめた「計画」をつくるのだ。

こうしてみると、受験生にとっての「問題」とは、すべて「火消し問題」にあたる。
いま、世界を震撼させている「新型コロナウイルス禍」も、「火消し問題」としての解決策が目立っている。

そして、その解決策の「まずさ」が、パニックをよんでいる。
「発見問題」にしていないし、「探索」するという行為がないがしろにされているからである。
それで、感染予防についての情報が、マスク着用やひとの集まる場所にいかない、という安易な解決策ばかりが実行されている。

こうしたことが起きる理由は、たとえば東日本大震災における「反省」や「SARS禍」が、「予測問題」として活かされていなかったからである。
つまり、だれも「対策計画」を作成していなかった。

これを、ふつう「場あたり」という。

その場限りの「火消し問題」だけに集中し、喉元過ぎれば熱さを忘れるということわざを無視した結果のお粗末が、現実になってしまった。

さてそれで、これからどうなるのか?
あらためて、予測問題を設定しないといけない。
これは、個人もおなじである。

三種類の問題が世の中にはある。
せめて、これくらいは、今回の教訓にしないと、壊れた世の中の回復ができない。

それこそが、大問題なのである。
年度末の今日、まずは、来年の年度末の「予測問題」を解こうではないか。

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