絶望的な温泉宿の破産

2年も前に「絶望的な温泉宿」というタイトルで書いた宿が、こないだ破産したというニュースがあった。
まるで、コロナ禍の被害のような書き方ではあったけど、ぜんぜんちがう。

振りかえれば、2年も営業していたのが凄みとも思えるのである。

倒産や破産など、残念な事態が発生するのは、やっぱり経営に失敗しているのである。
このごく一般的な状況からの破綻は、いつでも起こり得るので、コロナ禍にあっても発生している。その意味で、本当のコロナ禍が原因の経営破綻は、これからの秋口から発生するとかんがえられる。

つまり、この秋前の破綻とは、一般的な経営の失敗によることが原因になっているとかんがえられる。
ただし、早く見切りをつけた場合の「店じまい」はまた別の判断によるものだから、これを「破綻」とはいわない。

「秋口から」という理由は、雇用調整助成金の期限があるからだ。
コロナ発生の春から始まった制度で、半年間が当初の助成期間だったから、「秋」が問題になるのである。
いきなり破綻せずとも、雇用の終了すなわち「解雇」が大量に発生することが予想できる。

わが国でほとんど不可能な正規雇用のひとの「解雇」ではあるけれど、事業継続が困難となったことが「解雇事由」となれば話は別である。
これを「会社都合」という。

逆にいえば本人が犯罪を犯した以外、事業継続が困難でないなら、解雇はできないと考えるのが妥当である。
すると、従業員側は、自社の経営情報を普段から知っていないと、ある日突然、解雇されることがあるということになる。

この意味で、経営者の経営情報開示義務は、株主だけでは済まないのだが、わが国ではあんがい重要視されていない。
個人経営の株式会社の場合、株主総会でさえも「書類だけ」というのがふつうである。

公認会計士による会計監査を経るのではなくて、税理士がつくる決算をもとに、税理士がそのまま「総会議事録」を書いて、それに株主が押印すれば便宜的に総会をやったことになる。

こうした会社の場合、決算書すら本当の株主だって見ていないかもしれないのだから、ましてや従業員に開示するという手間をかけることはまずないといえる。
それに、「36協定」ですら締結していないのが「ふつう」だから、従業員から経営情報の開示要求をすることもないのは、「従業員代表」も選出していないからである。

このように考えると、この国の労働問題は、その実態として「労務問題」にもならないレベルなのである。
そうすると、労働組合が存在するということは、こうした企業で働くひとたちにとっては、まったく想像も及ばない「別次元」のことになるのである。

想像も及ばないから、自分たちで労働組合を設立しようとかんがえることもない。なので行動もしない。
もちろん、会社側=経営者は、自社に労働組合が設立されることを「よしとしない」という常識がある。

これには、思想的に怪しい労働組合がたくさんあって、「活動家」が事業の妨害行為をするかもしれいと畏れるからである。
こうして、まったく「労働三法」どころか、「労働基準法」による「保護」すら得ることがないでいても、痛いとも痒いともおもわないひとたちがたくさんいるのである。

労務問題であれば、社会保険労務士という「士業」があるけれど、雇い主はほとんどの場合、経営者になる。
ならば例えば、「社会保険士」と「労務士」とに分けて、経営者は社会保険士を、労働者は労務士を雇う方法をかんがえてはいかがか。

あるいは、労働基準監督官の定年退官者を労務士として登録し、労働者保護のための活動をさせるべきであろう。
当面の目標は、すべての事業所に「36協定」を締結させることである。

つまり、働くひとへの2大義務を課すことが重要なのだ。
・経営情報の開示
・36協定

これは、上述のように経営者には「痛い」と思われるだろうけど、倒産させないための「保険」でもあるのだ。
なんとなれば、従業員の働きの「質」こそが、その企業のパフォーマンスを決定するからである。

経営との一体感を持つための、「最低限」がこの2大義務であろう。

だから、法制化すべきである。
法は、最低限のルールであるからだ。
これに、「任意」として加えれば、働きの「質の向上」すなわち、目的合理的な労働による「付加価値の向上」のことになる。

優良企業は、自然と「付加価値の向上」に常に取り組んでいる。
仕事内容の分析を通じて、改善を怠らないのはこのためだ。
残念な企業は、こうした努力をいっさいしない。
「やり方」をしらないだけでなく、「動機」すらないのである。

だからこれが、倒産の理由なのだ。
2大義務を課すと、従業員側からチェックが入るけれども、それが経営者の「動機」になったり、従業員からの付加価値の向上「提案」になったりする可能性がある。

資金を提供する金融機関だって、2大義務の項目がなければ融資できないとなれば、審査も簡単になってスピードアップする。

融資が受けられないかもしれないなら、経営者は「やるしかない」だろう。

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