政府予算に無駄遣いはない

与野党ともに、政府予算の無駄遣いをただす、というアナウンスをして、ただすことができたためしがないのは、「政府予算に無駄遣いはない」からである。

たとえば、民主党政権のときは、「特別会計」が「埋蔵金」だといって、これを掘りだすまえに高速道路の1000円均一をやったら、財源がなくなって途中でやめたし、鳴り物入りの「子ども手当」も腰砕けになった。

そのわりに、与野党ともに、じぶんたちが与党のときも野党のときも、国会の予算委員会で予算案のことを審議せずに、スキャンダルの応酬に興じるのは、おそらく政府予算案を読み込んで質問する能力がないからだろうし、一般会計予算「だけ」が国会審議の対象という都合のよいルールがいつのまにかできているので「特別会計」を議論できない。

それで「予算審議」したことになって、衆議院から参議院におくられて、受けた参議院でもおんなじスキャンダルに興じてしまって、けっきょく原案どおりの予算が成立することになっている。

なのに、政治家や評論家が、「政府のムダを削減せよ」というのは、いったいなんのことなのか?
そんなことだから、ムダなのは国会議員のほうだ、になって、定数削減のはなしになるから、行政官僚の笑いはとまらない。

まじめだがトンチンカンな議員や、あたかもちゃんと取材をしているようにみせたいマスコミは、予算の無駄遣いをあろうことか役人に質問する。
証拠もないのに警察が泥棒に、おまえがやったろ?ときいたって、いまどき「おそれいりました」なんてにんげんはどこにもいない。

それを、トンチンカンでない議員が切り込んだら、殺人事件が発生した。
民主党の故石井紘基議員こそ、日本人がわすれてはならない戦後最大の国会議員らしい国会議員だった。
著作は何冊もあるけれど、せめてこの一冊ぐらいは読んで損はない。

どうしてこんな骨のある人物が「民主党」に所属していたのかが不思議で、ほんらいならアメリカ共和党のような政党を組織できたかもしれないとおもうから、「暗殺」されたことの損失は本人と遺族どころか、国民全体に痛い。

わかいころ、社会党労農派の江田三郎が安保闘争で唯一デモ隊と対話した気概に惚れこみ、そのご秘書として世話になったあげく、モスクワ大学政治学科に留学している。

まさに、江田への情緒が恩義として社会党・民主党という泥船に本人をいさせた理由だろう。
それはそれとしての論理が情緒にまけたのだ。
しかし、これは国民の敗北でもあるから、故人には申し訳ないが恨み節をいっておきたい。

なぜかといえば、モスクワ大学での留学経験をもって、彼のなかの理想としての社会主義は崩壊し、ソ連型社会主義をそっくり追求するわが国への危機感がふくらむからである。
そのまっしぐらな追求をしていたのが、盤石な自民党政権であったから、夢にも自民党への移籍という選択は、論理としてなかったにちがいない。

この苦悩は、なかなか常識人の他人には理解されないものだったとおもう。
自民党は「保守」だという、情緒でのきめつけが常識だったし、その自民党にアンチをつきつけるのも、社会党・民主党しかなかったからだ。

つまり、石井紘基というひとは、ソ連で自由主義に目覚めたのだが、この日本という国にヨーロッパ感覚の自由主義をめざす政党がなかった。
なるほど、極東という「辺境」に住んでいるのがわれわれ日本人なのである。

自宅駐車場で刺されたのが2002年だった。
いまだに、この国はそのままのすがたで、衰退している。

そんなわけで、役人という予算をつかう当事者からすれば、ぜんぶ「必要」だから予算請求しているのであって、そこにムダなんて存在しない。
どれもこれも、国民生活に必要なことばかりなのである、という論理がつづいているのである。

しかし、語るに落ちたとはこのことで、国民生活に国家や自治体が介入してはいけない、というのが自由主義だから、国民生活に必要だという国家予算ほどいかがわしいものはない。
むしろ、国民生活に直接関係のないことのほうが、ほんらいの国家がやるべきしごとなのだ。

すると、いまどきは外交と国防と警察ぐらいのものになる。
このなかの警察だって、あんまり生活に密着してくると、息苦しいことになるから、つかず離れずがちょうどいい。

すると、なんていうことはない、ほとんどの役所が無用になる。
しかし、公務員は身分が確定されているから、クビにできないことになっている。

公務員制度改革の本命は、省庁廃止によって公務員を解雇できるようにすることである。
すくなくても、これで頭数だけは民間の人手不足が解消する。
ただし、各役所からでてくる元公務員たちが、労働力として上質かといえばかなりあやしい。

職業人としての教育訓練が、あらためてひつようになって、それが日本経済を強化するから、やっぱりわるいことはなにもない。

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