前にすこし触れた、いま話題の適菜収著『高市早苗という病』についてである。
これだけ現職の首相・衆議院議員をディスっても、名誉毀損で訴えられないのは、周到に著者が「原典」を収集し、これをネタにしていることによるからだろう。
出版社も、原稿内容をよく法的チェックしたとおもわれる。
子供には、嘘つきは泥棒の始まり、と教えたものだが、人生を嘘からスタートすると、後にとうとう辻褄があわなくなって、破たんするか本当に泥棒になってしまうものである。
この本を読み始めると、すぐに顔が浮かんだのは、石井妙子著『女帝 小池百合子』の表紙であった。
まさに、似たもの同士、である。
そして、石井妙子氏も訴えられてはいない。
アメリカでは、イルハン・オマル連邦下院議員の捜査がすすんでいるが、法律の専門家は、なぜにオマルは最初に捜査を開始したバイデン時代の司法当局と取り引きをせず、また、なぜに名誉毀損で訴訟を起こさなかったのか?と問うている。
ようは、有罪を本人がいちばんしっているからだろう、と推測できるはなしなのである。
それでも、高市早苗の選挙区民(奈良県2区:大和郡山市、天理市、香芝市、奈良市の一部、生駒郡、安堵町、川西町、三宅町、田原本町、北葛城郡)たちは、この人物を落選させないのだろう。
これは、民主主義というシステムの欠陥であるのだけれども、その本質は「多数による少数の支配」だからである。
では、その多数とは何者か?を問えば、利益誘導を受け入れるひとたち、と言い換えることができる。
たとえば、横浜市長選にあたって、自民党など4党が推す候補の決起集会が、市内某宴会場でおこなわれたが、その様子はネットにあり、会場に入りきれないひとたちであふれている。
彼らこそ、私的利益誘導(公金チューチュー)に群がった者共なのであって、介入主義の恩恵をまっさきに得ることができる、と信じて疑わない「餓鬼」である。
このように、自民党は、政党ではなく自ら「圧力団体」となって、政府(中央であろうが地方であろうが)からの公共財産掠奪のための司令塔になっている。
まったくもって、100年前にミーゼス博士が書いたとおりの無様が、現代のタブレットでリアルに確認できるのである。
しかして、こうした無様が「常識」として定着したのは、マルクスやらの共産主義と、ケインズの介入主義によるものだ。
アダムスミスから生じた経済学(古典派)は、新古典派に進化してもケインズを呑み込むばかり(「新古典派総合」という)で、古典派の自由(放任)主義をバカにしてきた。
そこに、突如、オーストリア(ウィーン大学)から、メンガーが登場し、系統を引き継ぐミーゼスの「人間行動学」がうまれたが、信じられぬことに、わが国では100年経ってもミーゼスをしらない経済学者がほとんどなのである。
現代でも主流派(「あたらしい新古典派総合」=「近代経済学」)は、「ミクロ経済」と「マクロ経済」の統合ができないが、ミーゼスはとっくにそれらの統合に成功していることもしらない。
このおそるべき無知が、自民党や維新、あるいは参政党を含む既存政党、そして歴代内閣と高市、小池やらの嘘を破たんさせない理由なのである。
なぜなら、国民が、政府に依存して得になることはない、というミーゼスの結論を常識として認知したら、こうした嘘つきたちの存立する基盤そのものがなくなるからである。
彼らは、他人から奪ったカネ(税や国債代金というインフレを伴う新規発行通貨)でもって、つまり、けっして自分のカネではないものを、群がる亡者たちに分け与えることで権力で維持しているだけの存在なのだ。
だから、国家財政がどうなろうがほんとうはしったことではないが、国家財政が分配の原資だからこれが傷むと彼らの権力も傷む。
よって、吸血鬼のごとく国民へ増税(「インフレ」も同様に増税である)をおしつけるのだが、やっぱり自分のカネはビタ一文出すことはないのである。
残念だが、こうした仕組みに気がつかない愚民こそ、彼らの繁栄を助けるので、とにかく調子のいいことを口からでまかせにして、その場をつくろうのである。
ところで、本書の「調査内容」は、どこまでトランプ政権2.0のしるところなのか?も気になるのである。
当然に、若い頃に世話になった民主党パトリシア・シュローダー連邦下院議員(2023年死去)の「研修生」(給料は松下政経塾から)だっとことは承知しているはずである。
むろん、本書が出版されたことで、「一般情報」としてそっくりそのままアメリカ政府(おそらく国務省かCIA)に送付され翻訳されているはずだ。
なにせ、同盟国現役首相の評伝だからで、これまである「身上調査ファイル」とつきあわせをしているはずである。
アメリカ政府はしっかり把握していることだろうし、トランプ大統領にもブリーフィングされる可能性は高い。
アメリカ、とは、そういう国である。
というか、それが普通の国における外交上の基礎情報なのである。
では、ロシアは?も、おなじで、東京からモスクワへ本書は送付されている可能性が高いとみるばかりか、しっかり分析されることだろう。
これが、老獪なロシア外務省の地道な仕事なのだ。
ならばあの国は?と連鎖するのは、あたりまえのことである。
本書で指摘された、高市本人の「無能」は、外国勢力(とくにアメリカなど)にとって、レーニンの名言、「役に立つ白痴」としての価値を持つ。
ために、これら外国からのカネで動くビジネス保守は、高市あげ、により熱が入るだろうし、政権維持のお先棒を担ぐこととなる。
しかし、高市がその無能ゆえに依存するのがトランプ政権2.0という、これまた戦後レジームを変えるかつてない政権であるために、「日本独立」の大事業をあたかも高市政権のもとで実行する、という歴史的偶然もあるのだ。
ようは、高市の一貫性のないメチャクチャな発言は、そのどれもが無能からのものではあるが、諸外国の力関係だけで揺れ動いていると解釈すれば、「やばい」ことがわかる。
適菜収といえば、『日本をダメにした新B層の研究』が、これら愚民たちに読ませたい一冊なのである。
だが、愚民は地上波テレビを信じ、まともな読書すらしない、のである。
そして、難関大を経た国家総合職を代表する「エリート」(民間もおなじ)には、勉強疲れ、という病を発症する傾向が高いので、中堅以降の「高齢」ともなると、これまた勉強したくない欲求=現状満足、となって一切の向上心をなくすのである。
若い頃さんざん勉強したからもういい病、である。
しかし、その若い頃さんざんやった勉強とはなんだったのか?の価値判断もできないのが、偏差値エリートの偏差値エリートたるゆえんなのである。
そんな状態で、大幹部、の役職者になっているから怖ろしい。
わが国の衰退は、政権の失策もあるが、人材育成に失敗していることの方が、よほど深刻なのである。
高度成長期(昭和30年代から40年代)の現役職業人は、全員が戦前の教育体系のおかげだったことさえ忘却している。
このとき20歳の新人は昭和10年生まれからギリギリ戦後すぐの昭和20年生まれだし、管理職でも定年は50歳だったので、全員が大正生まれ世代にあたる。
その上の大臣クラスや経営者は、明治期の生まれだ。
いま、それが、全員、戦後教育体系で社会人になったのである。
この意味で、わが国の衰退は、戦後教育体系の失敗の結果なのであって、それを代表するのが最長老の麻生太郎以下の自民党大幹部たちである。
あぁあ。

