サウジは大丈夫なのか?

3期目という掟破りをやったばかりの習近平氏が、飛行機に乗って、サウジアラビアを訪問して、「最高級の国賓」として大歓迎を受けたことがニュースになっている。

トップが飛行機に乗ることの意味は、あんがい深い。

それでもって、「包括的戦略協定」を両国間で締結して、サウジアラビアは、一気に中共圏に加わったように報道されている。

事実上の「国王」にして、現首相の王太子(日本では王太子を皇太子と書くプロパガンダが横行している)は、いったいなにをかんがえているのか?
わからないけど、勝手に邪推してみたい。

なお、外交儀礼としての「国際プロトコール」では、席次を「古さ」ではかることになっている。
たとえば、東京駐在の外交団(特命全権大使)の席次も、着任順になっているから、着任が古い公使級では大使とはちがう序列ができる。

それで、国の席次も「国家元首」の古さ順になるので、世界最古の「王朝」として、わが国皇族が席次の筆頭に「かならず」なるのである。
これが、うそみたいに歴史が浅い英国王朝の、エリザベス二世女王の葬儀でも行われたが、日本のメディアは、例によってこれをいわない。

だれが何といおうと、わが国で消費している石油の最大の供給国は、サウジアラビアで、これに隣国のアラブ首長国連邦(UAE)を足せば、7割というシェアになって、さらに湾岸産油国を加えれば9割になる。

つまり、われわれ日本人のふつうすぎる文明的生活は、アラブの石油の上に成っているのは、いまさらいうまでもない事だけど、これを意識しないで生きているから、あんがいとピンとこないピントズレのひとが多数いる。

地中から出てきた石油(原油)を、タンカーに乗せて日本まで運ぶので、まずはペルシャ湾の入り口にある、ホルムズ海峡の安全(たとえばソマリアの海賊や対岸のイランの動向)が保てないとたちまち大騒ぎになるのである。

それから、インド洋を越えて、つぎの難関がマラッカ海峡で、そのつぎが台湾海峡となっている。
これは、中国と韓国もおなじことだ。

わが国を「(仮想)敵国」としている、中国や韓国、なかでも中国は、マラッカ海峡を自国でコントロールするべく、南の島を埋めたてて要塞化した。

当時のアメリカ・オバマ政権は、「よしておくれよう」というだけで、なにもしなかったから、そのツケをトランプ政権が払わされることなったけど、どういうわけか、わが国のマスコミはこの功績を「戦争を煽る」といって煽るのである。

オバマとトランプのどちらが、わが国の国民生活のためになったかは、かんがえるまでもないけど、かんがえさせない戦略にはまって、オバマやバイデンに好意的な日本人がたくさんいるのである。

これを、情報弱者というけれど、ワイドショーの芸人MCが自らしたり顔で情弱を演じて、一般人を洗脳させる役をしれっとやっているのを、毎日観ていたらこれが「伝染」するから、コロナよりおそろしい。

それで、当時、わが国最初の女性総理を目指すと公言してはばからなかったひとが、島の要塞化を質問されて、「わが国からはるかに遠い島のことだから関係ない」という、驚きの見解を述べて、「ダメ出し」されたのであった。

こんな人物でも、与党の政調会長とか総務会長をやって、政界でのキャリア構築ができること自体が絶望的なのであるけど、岐阜のひとは落選させない。
まぁ、それをいったら、菅氏とか、小泉氏とか、河野氏とか甘利氏がいる、わが神奈川県民のお粗末も、全国民に謝罪すべきはなしになる。

さてそれで、サウジアラビアである。
この国は、サウド王家という一族が支配しているけれど、最初の建国は1744年で、いまの英国の王朝(ウインザー朝)よりぜんぜん古い(格上)のだ。
なお、英国は女系相続したので、女王の死去によってウインザー朝は滅亡した。

国名の「サウジ」とは、「サウド家の」という意味だから、わかりやすい。

王国として権力を掌握した背景に、イスラム教があって、いわゆるスンニ派のなかのワッハーブ派という宗派を「庇護する」ことを条件に「世俗的権力」を得たという事情がある。

日本人は敗戦後、宗教を「理性でかんがえる」ことを強要された(啓蒙主義にはじまる革命思想による)ので、神道も理解できないように改造人間にされたから、イスラム教も理性で解説したがる。

しかし、このひとたちは「信仰」をしているという、「感性」のはなしなので、理解に苦しむようになった。
『旧約聖書』を根源にする、ユダヤ・キリスト・イスラム教徒は世界人口の半分以上になるので、理性派が小数派だと認識しないとはなしが通じないのである。

そんなわけで、平然と宗教弾圧が立法によってできる国にするという、特定宗教の被害者「救済」をしようという、人類史に逆らうことをやるのは、憲法違反以前の問題だけど、だれも気づいていないのか?こわくていえないのか?

信者が自己の「救済」を完全「世俗」の近代国家の法に求める本末転倒に、日本が宗教否定の思想になったことの根源的重要性があるのに。
つまり、中共チームに精神的加盟をしたことになったのである。

いろいろあって、いまの「サウジアラビア」になったのは、1932年のことだった。
だから正規には、まだ90年の「王国」なのである。
ただし、王家がワッハーブ派を「主宰する」ことでの「政教一致」を看板にしたことがあたらしい。

建国時の宗教と世俗のベクトルが、もっと宗教に寄ったのではなくて、一体化したのが、いまのサウジアラビア王国の根源にある。

実質的に最高指導者となった、若きムハンマド・ビン・サルマン王太子兼首相の生い立ち(1985年生まれ)は、例によってよくわからない。
サウジアラビアのキング・サウード大学法学部卒で、神経言語プログラミングの学位を取得し、卒業後は民間企業に就職したとある。

じっさいに、彼の思想がどこにあるのかはわからないけど、サウド家としての立ち位置(じつはこの国の「王族」は1万人:人口二千七百人にひとりいる)からすれば、王族だけでも統率するのに宗教がひつようになる。

この原因は、初代、アブドゥルアズィーズ・イブン・サウードの子供が、200人いるともいわれて、五世代目が生まれてきている事情による。

なので、中国との蜜月といっても、宗教を否定する共産主義の中国(日本も含む)とは、水と油以上に交わる可能性はない。
すると、包括的戦略協定とは、完全に「世俗的」なのであって、ワッハーブ派の斎主としては、「悪魔との提携」となる。

これを、伝統的サウド家のひとたちは、一致団結して支持しているかどうかも疑問がある。

むしろ、伝統的イスラムの保守を標榜せざるをえないサウジからしたら、欧米的(キリスト教)グローバル全体主義に対抗する意味が強いはずだ。
すなわち、敵の敵は味方、とする「治乱興亡」の立ち位置からの蜜月なのだろう。

そんなふうに妄想すれば、アラブ的で予想が困難な「ちゃぶ台返し」を、いつ、どのような方法で行うのか?があるだろうし、中共的な「倫理なき裏切り」が先なのか?の順番もふくめて、「離別」についての興味が深まるのである。

ただ、石油産油国の盟主として「SDGs」を気にしているのが、わたし的には気に入らない。
もっと石油を使うキャンペーンを徹底的にやって、国連にカネを出さないといった方が、人類のためになる。

日本にも、SDGsを推進するなら石油を売ってあげない、というだけで目が覚めるのに。

どちらにせよ、自分だけ、しかかんがえないひとたちの「強い握手」は、やっぱり、自分だけのためにある。
そこに、「神の御意思」が登場したり、中共の内部事情たる権力闘争があるだけという、単純さが隠されている。

本当は、日本の立ち位置が一番危ういことがわかった「会談」だったのである。

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