トランプ政権下で純産油国だったアメリカと比べてもせんないけれど、バイデンが就任日に署名した、シェールガス・オイルの新規掘削禁止の大統領令を皮切りに、さまざまな「対策」の成果で、約1年半後の2022年6月には、過去最高のガソリン高を記録した。
1ガロン(約3.785L)あたり、3.59ドル(約508円)になったのである。
リットルに換算すれば、約188円ほどであった。
しかし、今年の6月には、石油価格の下落で、2.1ドル(約298円)ほどになった。
同じくリットルに換算すれば、約79円となる。
電気代もそうだが、わが国は、仕組みとして作られた料金体系がある。
「産業国家」のくせして、あらゆるコストのもとになるエネルギーコストの上昇は、産業競争力を弱体化させてしまうのに、無策を続けて平気なのである。
電力各社は、空前の黒字を計上しているのに、電気料金は大幅値上げが「認可」されている。
認可を出すのは、日本経済を破壊するためにだけ機能している、経済産業省だ。
原油の9割を中東依存しているわが国は、中東産油国から禁輸措置を二度と喰らわない(第一次石油ショック時に半年間禁輸された)ために、「ジャパン・プレミアム料金」という名の、「割り増し金」を支払うことで、世界価格より高価な石油を買ってきている。
カネさえ払えばいいでしょう!という、目先の「損得勘定」が、わが国石油外交の基本なので、カネがあるうちなら、誰が担当官になっても「事件」にはならない。
カネが動くところに利権があるので、めざとい田中角栄は自派の収入源にして世を去った。
なので、この遺産を引き継ぐ茂木派なのに、再生可能エネルギー利権にも手を出して、マッチポンプ状態を自分でつくっている。
とにかくなんでもいいから、いま、カネになればいいだけという価値観が支配しているのである。
SDGsが、ただのビジネス利権であるのは、こういうことだ。
ここに、国家観や国益、あるいは国家戦略なんてものは微塵もない。
それをまた、カネになるからと選挙で支援して当選させるのも、一般有権者をしらけさせて、「棄権」に導く戦略が活きているからである。
そんなわけで、補助金が切れるという理由で、わが国のガソリン価格は上がることになっている。
9月末が本予算の期限だから、10月1日から大幅値上げになることは確定している。
レギュラーでリッターあたり200円になるというのは、ほんとうだろう。
しかし、200円で済むのか?という問題は別にあるし、過去の例からも、物価上昇の引き金になることはまちがいない。
これだけ綿密になった、物流網だけでも、ガソリンや軽油価格の上昇が物価に転嫁されるからである。
もちろん、生産におけるエネルギーコスト上昇は、さらなる海外移転につながりかねない。
それがまた、サウジアラビアが掲げる、「工業化」の狙いでもある。
生活者にとっては厳しいボディーブローにちがいない。
給与所得が下落していることに歯止めがかからないなかでの負担増になるからで、ようやくコロナ禍から脱したはずの観光業が、次の試練に見舞われることになった。
移動コストの上昇と、宿泊料金の上昇は避けられない。
過去にあった、経済が拡大基調のなかでならまだしも、縮小基調のなかでのインフレは、転換点になるにちがいないからである。
この先行例はいまの英国で、保守党の悪政が次期選挙での政権交代を確実にしているというけれど、労働党が救世主になったためしは過去にない。
甘いバラマキ政策で、かならず財政がイカれるからだ。
もちろん、円安がもたらす外国人観光客の増大は、一つの期待にはなるけれど、全体規模が小さすぎるのである。
国内観光の8割が日本人による需要であった。
何度も書いてきてきたが、国がいう「観光立国」が絵に描いた餅に過ぎないのは、わが国経済における観光業のシェアそのものが小さすぎるからだ。
むしろ、国民貧困化のための「おだて・すかし」にしか見えない。
生産性が極度に低い、わが国観光業への就労は、それ自体で貧困化への一歩になるからである。
さて、岸田氏というよりも自民党と公明党は、いつ、衆議院議員総選挙を挙行するのか?
広島サミット直後、という予想が外れて、なんだかグズグズしている。
驚くほど浅はかなこのひとたちは、ガソリン補助金の大盤振る舞いをもって人気取りとするのではないか?
それはまるで、イギリス労働党とおなじ発想なのである。
こうした、合法的買収しか、もう選挙で訴える「争点」がないのである。
その引き換えに、増税を計画するのはわかりやすいではないか。
必ず、財源の話になるからで、野党はこれに対抗できない。
どういうわけか、減税を主張しないのは、あたかもわが国のお作法になった感がある。
減税を公約にしたトラス政権は、実施しようとしたら内閣も潰されてしまった。
しかし、国民は重大なことをしらされていない。
政府は、税収で運営されてはいない、ということだ。
大統領候補に名乗り出た、ロバート・ケネディ・jrが、命がけの暴露をしたのは、CIAの予算の話だった。
この組織には、2万人以上の正規職員(もちろん国家公務員)がいるけれど、その運営の実態が不明なままなのは、傘下に多数の「投資会社」をもっているからで、政府予算に加えてどれほどの利益がこれらの会社から得ているのかがわからないと明言したのだ。
これは、ナチスにおける「親衛隊」(数十万人がいた)と酷似している。
じつは、親衛隊最大の悪事は、「経済管理本部」がやっていたのである。
ユダヤ人から奪取した、金銀財宝の窃盗はもとより、この組織は自己増殖する企業も保有していた。
都知事になる前の猪瀬直樹氏が、道路公団民営化問題に取り組んでいたときに、その傘下の子会社・孫会社の実態まで調査するのは不可能だと嘆じていたのは、会計検査院の報告とも合致するし、2002年に暗殺された石井紘基衆議院議員も、この問題に切り込んでいた。
日本政府は、会社運営もやっているのだ。
それが、伊藤博文がつくった「特別会計」なのである。
わが国も、平和的な装いの「親衛隊」が中核をなす、マフィア化した国家なのだった。